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第12話
なんで龍が俺から離れないのか。その理由は単純明快。今朝起きたとき隣に俺がいなかったからだ。
気付いたらソファーに横になり、しかも遼の膝を枕代わりにして寝ていた。
これって遼が着ていた上着だ。
お腹が冷えないように掛けてくれたんだ。彼の何気ない優しさが嬉しかった。上着をそっと手繰り寄せぎゅっと抱き締めると、彼の匂いと温もりに包まれて幸せな気持ちになれた。
「……」
彼の声が聞こえたような気がして。
どきっとして顔を上げると、彼は規則正しい寝息を立てて熟睡していた。
(良かった……)
ほっとしたのも束の間。枕を脇に抱え、思いっきり下唇を伸ばした龍と目が合ってしまった。
「光希がいなくて寂しかったんだよ。昆、寝たフリしてないで僕の光希を返してよ。聞こえているんでしょう?無視しないでよ」
「朝からぎゃんぎゃん喚くな。うるせーな。寝起きは機嫌が悪いんだ。怒らせるんじゃねぇ」
普段の物静かな声じゃなく、ドスのきいた低い声……多分、こっちが地声なのかも知れない。
前髪をかきあげる姿がゾクッとするくらい色っぽくて。どぎまぎして真っ赤になってしまった。
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