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第13話

「あれ?光希先輩」 「信孝なんでここにいるんだ」 「光希先輩こそなんでいるんですか?」 茉弓を見送り改札口に向かっていたら信孝とばったり出会った。 「茉弓と一緒に帰るつもりだったんだけど、色々あって」 ちらっと龍を見た。 「龍成、光希先輩を引き留めたらダメだろう。人様の迷惑になるようなことはするなといつも言ってるだろう」 信孝に注意されると、おもいっきりあっかんべーをしてぷいっとそっぽを向いた。 それから数分後。 「兄貴ぶっ殺す」 「小三のガキに何が出来る。信孝さっさと連れていけ」 信孝はお母さんの7回忌の法要に参列するために上京したみたいだった。 「迎えに行く手間が省けた。龍成、行くぞ」 「ヤダ。絶対に行かない!光希とデートすんだから。兄ちゃん離せ!」 手足をバタつかせ抵抗する龍の首根っこを掴むとそのままズルズルと引きずっていった。 遼が二人分の切符を買い、一つを渡された。 「福島では電車に乗ること自体滅多にないだろう」 彼と一緒に電車に乗り込んだけど、予想以上に混み合っていた。 あまりの人の多さにくらくらして、酔いそうになった。 「福島ではあり得ない光景だもんな。面食らうのも無理がない」 遼がクスッと笑った。 電車が揺れるたびよろけ、必死になって吊革に掴まり、踏ん張っていると、 「俺に掴まれ」 遼が小声で言うと、すっと腕を差し出した。 「背が足りないんだ。無理するな。よろけそうなら、俺に掴まればいい。腕にでもしがみついていろ」 どうせチビですよ。むすっとして遼を見上げると、 「きみといると楽しいよ」 声を出して笑いだした。

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