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愛と狂気。
「ふふふっ、まるで追い詰められた仔猫の様ですね。そんな風に怯える貴方が俺は可愛くて仕方ないです」
そう言って阿川は俺を壁際に追い詰めた。ジリジリと、あいつの熱が近くで伝わってきた。その度に奴を意識した。
「葛城さん。まだわからないんですか…――? 俺はずっと貴方が好きでした。といっても、俺の一方的な勝手な片想いですけどね……」
「あ、阿川……!?」
驚くようなその言葉に衝撃を受けると、阿川は俺の唇をキスで塞いできた。そして、強引なあいつのキスに流された。その度に拒めない自分がいた。
「やっ、やめっ……!」
「葛城先輩、貴方が好きです! 何もかも全て奪い去ってしまいたいほど、俺は貴方を…――!」
「ンンッ……!」
阿川は自分の想いを一方的に言ってくると、俺の気持ちなんかお構いなしに荒々しくキスしてきた。そして、そのままキスを続けた。足下が立っていられなくなるとガクッと下に落ちた。するとアイツが俺の体を受けとめた。
「ふふふっ。どうしたんですか? ああ、キスだけで腰が抜けちゃいましたか? 葛城先輩は可愛いですね。でもまだまだこれからですよ、俺が今から貴方の体に刻んであげます」
「なっ、何を……!?」
「例えば、俺がどんな風に貴方を好きかをね――?」
そう言って俺の体を両手で抱き上げると、そのまま喫煙所の椅子に無理やり座らせた。そして、ベンチに座らせると自分のネクタイを外してそれを俺の両手に縛りつけた。その瞬間、完全に両手を塞がれて身動きがとれなくなってしまった。
「なっ、なんの真似だ……!?」
「そうやって拘束されても強気な態度とか貴方らしいですね。でも、その強気な態度がいつまで続くでしょうか?」
「なんだと…――!?」
阿川は目の前でズボンのベルトを緩めると、それを俺の両手に縛ってあるネクタイに固定して、そのまま上に縛り上げた。
「うっ……!」
「どうですか? いきなり体の自由を奪われる快感はゾクゾクしますか? 俺は凄くゾクゾクします。気高い貴方をこうして好き勝手に凌辱できるんですから。俺の封印を解いたんだから覚悟して下さいね――?」
アイツはそう言って俺の耳元で怪しく囁くと、不意に首筋にキスをしてきた。
「一体これはなんのつもりだ……!? 俺に何する気だ!? 阿川、いい加減にしろっ!!」
「俺はですね。葛城さんの事をずっと見てたんです。その事に気付きませんでしたか?」
「なに……?」
「それは気付きませんですよね。何せ葛城さんは俺と違ってノンケだからそんなの気づくはず無いですよね。俺はですね、男が好きなんです。とくに葛城さんみたいなプライドの塊みたいな人とか、すごくタイプなんですよ」
「阿川、お前まさか…――!?」
その言葉にまさかと一瞬で悟った。そして、思わず息を呑んだ。
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