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その時、彼は――(阿川side)
「っあ…! 阿川っ…――!」
「葛城さんっ…!」
その瞬間、二人は抱き合いながら快楽の海に溺れ果てた。そして、熱い吐息のままキスして抱き合った。葛城は彼にぎゅっと抱き締められると、そのまま抱き締め返した。そして、そこで彼は意識を失った。
目の前で気を失った彼の身体を抱き起こすと、自分の腕の中にソッと抱き寄せた。葛城は瞳を閉じたまま気を失っていた。そんな彼の姿をジッと見つめながらそこで小さな溜め息をついた。
やっと手に入たと思った愛の形は、彼が望んでいたものではなかった。ずっと好きだったから、思い描いてい形とは|別《ひきょうな》のやり方で愛を強引に手にした時、胸の中は彼に想いを遂げた事よりも罪悪感でいっぱいになっていた。そして、身勝手に彼を傷つけた事を酷く後悔した。罪悪感に胸が押し潰されて痛くなると、小刻みに身体が震えた。そして、瞳から涙がスッと頬をつたって溢れ落ちた。その瞬間、その涙は下にいる彼の頬を濡らした。
「っ、 ごめんなさい…! 貴方を好きになって…! だからごめんなさい…――!」
彼を無理やり抱いて傷つけたことに、酷い罪悪感を感じていた。そして、その思いとは別に胸の奥がぎゅっと切なくなった。好きで好きで、どうしようもない想いが次々に溢れてくると涙が止まらなかった。好きと言う純粋な気持ちが抑えられなくなると、腕の中に抱き寄せて静かに泣いた。そして、どうしようもないくらい愛しさが溢れると、彼の瞼にそっとキスをした――。
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