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その時、彼は――(阿川side)

 まだ眠っている彼の身体を濡れたハンカチで綺麗に拭くと脱がした服を着せ直した。そして、葛城が目を覚ます前にその場から静かに立ち去った。  始発の電車を待たずに駅から姿を消すと、その足で近くのファーストフード店へと入って行った。空いてる店内に独りで居ると、水を一口飲みながら彼は考えていた。頭に浮かぶのはあの時の顔だった。そして、ただ後悔だけが胸の奥を切なく締め付けた。  葛城さんに酷いことしちゃったなぁ。きっとあの人に完全に嫌われたな。葛城さんがついつい可愛くて、自分の気持ちに歯止めがきかなくなった。レイプするはずじゃなかったのにな…――。  何でこうなったんだろう、俺って最低だ……。  彼を傷つけたことに罪悪感と後悔に耐えきれずに、自分の頭を抱えるとカウンターの席で一人でため息をついた。店内に流れる静かな曲に涙が込み上げると、泣きそうな気持ちをグッと堪えた。そして、自分の鞄から携帯電話を取り出した。

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