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その時、彼は――(阿川side)

 そこで画像が入っているファイルを開いた。そこに写し出されているのは彼の卑猥な姿だった。  あの時は勢いで撮ってしまったけれど、冷静な今。それを見るのが辛くなった。そして、再び胸の奥に彼を傷つけた罪悪感が重くのしかかった。頭に浮かぶのはその時の様子だった。  嫌がっているのを知っていて彼のあられもない姿を平気で撮ってしまった。その時、彼がどんな思いで、自分に撮られたかも知らないで――。  阿川はその画像を改めて見ると、これ以上見るのが辛くなった。そして、自分が撮った画像を全部、その場で削除した。 「……ああ、俺って本当に酷いことしたな。こんなハズじゃなかったのに」  そう言って呟く声は暗く、表情は落ち込んでいた。店内に一人きりで椅子に座ったままボーッとしていると気がつくと腕時計は朝の7時になっていた。自分の手首に嵌めてる腕時計を見て確認すると座っていた席から立ちあがった。そして、そのまま電車を使わずにタクシーで家に帰宅した。

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