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43.突発的な報せ

肌寒さを感じてふと目を覚ましたテオドールは、大きな欠伸をしながら頭の下の柔らかな感触にそういえば、と状況を確認する。 「そういや、膝枕させてたか。っつーか、レイヴンまで寝てるのかよ」 苦笑すると、レイヴンを起こさないようにゆっくりと身体を起こす。 「……まだ眠ぃし。今度は抱き枕になってもらわねぇとな」 そっとレイヴンの身体を抱き上げそのままベッドへと運んで寝かせると、自分も横になりレイヴンを引き寄せて抱きしめる。高めの体温が心地よく、再度の眠りに誘われる。 「ん……」 「あぁ、もうちょい付き合ってくれよ。……おやすみ」 レイヴンをひと撫でして、テオドールもそのまま微睡みの中に落ちていった。 +++ 次の日の朝―――― 眠っていたレイヴンは遠慮がちに扉を叩く音で目を覚ます。 「魔塔主様、おはようございます。ご報告がございます」 魔塔の魔法使いの1人が扉を叩いているようだが、傍らのテオドールはレイヴンをしっかりと抱きしめたまま起きる気配がない。仕方がないと諦めて何とか拘束から抜け出すと、身だしなみを簡単に整えて扉を開ける。 「補佐官様?こちらにいらっしゃったのですね」 「昨夜、魔塔主様との打ち合わせが長引いてしまってそのまま休ませてもらっていた。魔塔主様はお疲れのご様子でまだ眠っていらっしゃるから、私が代わりに聞こう」 「はい、では……。先程王宮から使いの者が来まして、その。ヨウアル様が不慮の事故で亡くなったそうです。原因究明中ですが、死体の損傷が激しいため難しいのではないか、と」 「ヨウアルが?……分かった。魔塔主様には私から伝えておく」 魔法使いは安堵した表情を向けて一礼し、去っていった。 寝起きのテオドールは大抵不機嫌なので、皆起こしたがらない。基本的に恐ろしい人物だと思われているので、報告に来る者も緊張していることが多く、こういう場合は新人の魔法使いが無理矢理に行く羽目になる。 魔塔内でテオドールと対等に話すことができるのはレイヴンだけなので、テオドールに直接行く前に大抵は皆レイヴンを探すことが多かった。 「不慮の事故……」 レイブンは自分に言い聞かせるように呟いて扉を閉めると、ベッドへと戻りテオドールの様子を伺う。まだ起きる気配がなさそうなので、自室に戻ろうと腰を上げた瞬間―― 「な……ちょっと!?」 バランスを崩してベッドへと倒れ込む。そのままベッドの中へと引きずり込まれて抱きしめられて、強い力で身動きが取れなくなってしまう。 「起きてたんですか?それよりも、何してるんですか!ちょっと……っ、動けないし!」 「抱き枕がいなくなるから、目が覚めちまった。今日は面倒臭ぇから、寝る」 「昨日、真面目に仕事するって言うから我儘聞いたのに。何でサボろうとしてるんですか!それどころじゃないんですって!」 「……俺は一言も仕事するなんて言ってねぇぞ。で、それどころじゃないって?何事だ?」 ジタバタしているレイヴンの身体を離さずに気怠い口調で話の先を促す。いつもの溜め息を漏らしてレイヴンがテオドールと視線を合わせる。 「先程、報告がありまして。ヨウアルが不慮の事故で亡くなったそうです。原因究明中ですが、死体の損傷が激しいため難しいだろうとのことです」 「そうか。まぁ……ヅラが飛んで探しに行ったら馬車にでも轢かれたんじゃねぇの?」 「ヅラって……ヅラはおいといて。不慮の事故って……本当に、そうでしょうか?」 「俺に言われても知らねぇよ。それとも、何か思い当たることでもあるのか?」 何となく腑に落ちないレイヴンはそのまま口に出したが、テオドールは面倒臭そうで聞く耳を持たない。その態度も何か引っかかって、口を開こうとしたところで喋るなと言わんばかりに口を塞がれる。 「んっ!?――――んー」 「……今日はレイちゃんもサボってもらうから覚悟しろよ?補佐官殿曰く、俺はとても疲れているらしいからな。表向き、補佐官殿が代わりに仕事しないとな?」 グイと両腕に力を込めて何とかキスの攻撃を躱し、不満げに見遣るテオドールを無視して話を続ける。 「……起きてたなら普通に出てくださいよ。今日は主だった予定はない日ですけど、だからといってサボりとか……って、適当な解釈して何終わらせようとしてるんですか!もう、いい加減に……」 テオドールは返事代わりにキツく抱きしめたまま、先程よりも深く口付ける。反論も、引っかかりも、強引すぎる口付けに吐息も奪われて、レイヴンは頭の奥が痺れてくる。 「……っはぁ…も、何……師匠、昨日から、おかし…、んっ…」 「……気のせいだろ。なぁ…レイヴン。もう一度一緒に寝るか、このまま可愛がられるか、どっちがイイ?」 「選択肢が、おかしい、から……ぁ…ん…、…」 「こういう時は、コレに限るよなァ。レイちゃんも満更じゃなさそうだし?好きだろ、キスされるの」 ピタリと密着した身体はじわりと熱を帯びてくる。テオドールを跳ね除けようとしていた腕は力が抜けて、なされるがままに唇から快楽に蹂躙されていく。

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