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143.聖女のお告げ

「レイヴンちゃん、テオドール!」 「聖女様?」 「甲高い声出しやがって……なんだよ」 振り返ると微笑している聖女クローディアンヌが立っていた。テオドールをキッと睨みつけてから、改めてレイヴンに微笑みかける。 「レイヴンちゃん、くれぐれも気をつけてね。最近神殿にも相談ごとが多くくるのだけれど、この前ね、夢を見たのよ」 「夢、ですか?」 「またくだらないこと言い出したよババアは……」 「あぁもう!テオドールは黙ってらっしゃい。話が進まないのよ!もう。それでね、レイヴンちゃん。あなたがどこか暗いところにいたの。それも、子どもたちと一緒に」 クローディアンヌの憂いの表情と共にレイヴンが驚きの表情へと変わる。隣のテオドールも馬鹿にしていたものの、目を細めて顎で話の続きを促した。 「聖女様が見られる夢は予知夢という形のお告げだと聞いたことがありますが……」 「そこまで具体的に見える訳ではないけれど、そうね。今の話を聞いてもしや、と思ったの。だから、十分気をつけて頂戴ね」 「ご心配ありがとうございます。でも、子どもたちと一緒ということは……」 「あぁ。お前が何か見つけるのか、それとも……」 微妙な空気が流れる中、教皇にクローディアンヌが呼ばれてしまいこの話はここまでとなった。何かを思案しているテオドールだったが、すぐにレイヴンを見てニヤ、と笑う。 「仕方ねぇから俺も行くかな、見回り」 「今の話を聞いたからですか?気持ちは嬉しいですけど……」 「それだけじゃねぇが、今回の話はヤツらが絡んできてるはずだ」 テオドールの言葉を聞いて、レイヴンも何かがまた始まろうとしているのだと感じる。不安そうなレイヴンを見て、テオドールが頭を乱雑に撫でた。 「いきなりなんですか!」 「何だ、俺が一緒に行ったら不満か?」 「不満なじゃないですけど……」 「なら、決まりだな。ババアの話は完璧な未来予知じゃねぇが、お告げとなりゃあ、話は別だ。何かが起こる可能性が高い」 レイヴンの頭を撫でてはいるが、テオドールの表情は普段と比べると何か思案していることが分かる。レイヴンもクローディアンヌの話に一抹の不安はあるものの、テオドールが側にいるという言葉に内心安心してしまった自分がいる。 「まずは戻って準備をしましょう。これが今晩なのか、それとも何日か後なのかは分かりませんが……」 「そうだな。何人かは連れてくしかねぇな。何せどこから出入りしてやがるのかも分からなねぇときた」 「街に紛れ込むだけなら魔道具に引っかからないですからね。捜索(サーチ)の精度が高い何人かを連れて街を見回るくらいしかできませんが」 「領内で好き勝手始めるのはいただけねぇな。ったく、こっちが色々と仕込んでる時に余計なことしやがって」 後手に回る現状が気に食わないとばかりに、テオドールが自然と魔力(マナ)を放出する。慣れていないものは皆、息苦しそうに立ち止まるのに気づいたレイヴンが慌ててテオドールの手を握って嗜める。 「まだ王宮内ですよ!後で暴れていいですから……」 「暴れてって……俺は猛獣かァ?」 「あまり変わりませんから!探る時くらいは大人しくしてくださいよ?本当に」 「言ってることが無茶苦茶だなぁ、おい。まぁ……仕方ねぇから様子を見ないとな」 王宮から魔塔へと戻り、急ぎ準備へと取り掛かる。

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