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144.見回り中に

レイヴンが魔塔の魔法使いたちを招集し、先程議論したことについて説明する。隣にはテオドールも立っているが、説明は全てレイヴン任せだ。 「――以上。私と魔塔主様を含む隊を組む。今回は街中での戦闘になることも考慮し、基本は捜索(サーチ)の精度が高い者で探索をし、怪しい物、気配、気になることを見つけたら逐次報告。戦闘に入る場合は皆は基本補助、私と魔塔主様で攻撃を行う」 「……と、言うわけだ。お前ら、気合い入れろよ。まぁ、怪しいヤツを見つけたら報告さえよこせばいい。俺とレイヴンが攻撃を始めたら騎士を呼んでこい」 テオドールの言葉の後にレイヴンが隊を組む者たちを選出する。少人数ではあるが、基本の戦闘はテオドールとレイヴンで行うのと、街中での戦闘は騎士が主体になることから魔法使い隊は、補助魔法が得意なものたちが選抜された。 「補佐官様、よろしくお願いします」 「あぁ、よろしく頼む」 若くても将来性のある者を採用するのはテオドールの考えであり、彼もまだ日は浅いが補助魔法に関しては、どの補助からかければ良いのかという判断能力に優れていた。 早くから実地に慣らしておくことも大切であり、魔法使いは前線に立つことが少なく貴重な機会でもあるからだ。 +++ テオドールとレイヴン、他8名の魔法使いで城下町へと向かいまずは通りを普通に歩く。 時間は夕刻すぎ。少しずつ暗くなる時間帯でもある。 『こちらは異常ありません』 「引き続き西通りを――師匠、私たちは裏通りを……」 レイヴンが通信用の魔道具で会話をしていると、視界の端に子どもらしき姿を捉える。 魔道具の通信を切って、レイヴンが見えた方向へと視線を向けると同時に気づいたらしいテオドールも瞬時に切り替える。 「あれは?そちらは住居なんてないはずなのに!」 「おい、先走るんじゃねぇって!レイヴン!――いいか?お前らはさっさと騎士を呼んでこい!ここから出て真っすぐ走った先に、副団長がいるはずだ」 「分かりました!」 テオドールが乱暴に指を指したが、緊迫した状況なのを理解した魔法使いは言われた通りに必死に走り出す。テオドールは言って、すぐさまレイヴンの後を追いかける。 「いつもなら慎重に行く癖に何でこういう時には俺を頼らねぇんだ、あの馬鹿弟子は」 舌打ちして、裏通りへと飛び出ると子どもを庇うように抱きしめているレイヴンと、何人かの雇われと思われる賊が囲んでいた。反射的に魔法を打とうとしていたテオドールだったが、レイヴンの髪の色がブロンドに変化していることに先に気がつき一旦詠唱を止める。 『テオ、今、妖精さんに子どもたちが連れていかれた場所を探ってもらってますから。攻撃するのは少しだけ待ってください』 レイヴンが通信用の魔道具である耳飾りを使ってテオドールに語りかけてくる。テオドールも真正面から飛び出てしまったので、賊に存在を気づかれて剣を向けられる。喉元に切っ先が来ようと、雑魚数人では正直驚異でも何でもないのだが、レイヴンのために折れて時間稼ぎ役をするため戦闘体勢はそのままに、視線を賊へと向けた。 「アンタ……魔法使いか?」 「俺のことを知らねぇとは、大したことなさそうだなァ?」 「そっちの綺麗なお兄ちゃんも魔法使いみたいだが、さっきから固まって動けねぇみたいだし。大したことねぇのはそっちだろ?」 「これだから品のないヤツは。命が惜しけりゃさっさと吐いちまえよ」 「どうみても品のないのはアンタだろうが!喉元掻っ切られたくなけりゃ、引っ込んでろ!」 テオドールがだんだん面倒臭くなってきたのが遠目に分かると、レイヴンがもう少し!と伝えてくる。精霊魔法は普段の魔法に比べるとレイヴンでもまだ制御に時間がかかってしまう。 少しの間の後―― 妖精はレイヴンの元に戻ってきたらしく、姿を消しているのでレイヴン以外には姿が見えないが、レイヴンが小さく頷く。 「お前らさっきからコソコソと……」 「――とりあえず、お前はコレでいいか。凍れ(フリーズ)」 至近距離にいた賊には指先で冷気を流し剣を凍らせ、慌てたところで拳を腹に叩き込む。 身体が折れたところで、肘も背中に叩き込んで容赦なく1人潰していく。

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