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第1話

 だって、お前が言ったんじゃないか。  チョコが食いたい、って。  だからオレは。  ゆるりと浮かぶ意識。  ぷころぷころと頭の下から鈍く響く音がするのは、氷枕のせい。  低く続く空調の音と、遠くで動く人の気配。  ぼんやりした頭で考える。  今いるのは、しばらくの間オレが滞在している病室のベッドだっていうのは、張りのあるシーツの感じで納得した。  右腕に慣れてしまった小さな違和感があって、まだ点滴が繋がれたままなんだなと思う。  ってことはうたた寝くらいにしか眠っていないってことか。  脳細胞の変わりに細かい砂が詰まったように頭が重くて、寝返りを打つこともおっくうな状態。  瞼をあげるのも面倒くさくて、目を閉じたまま大きく息を吐く。  吐息すらも熱くて、さっき寒気で気が付いたあがり始めの熱は、まだあがり続けてるって教えてくれる。 「チヨ」  ベッドの周りをぐるりと囲んだカーテンのむこうから、そっと声がかけられて、隙間から人が入り込んだ気配がした。 「チヨ? 眠っているのか?」  ベッドサイドに入り込んだ人物が、オレの額に手を当てて熱を確かめ、張り付いた前髪を撫でつける。 「……やあ、先輩、こんばんは」 「狸寝入りか? 先生と呼べよ。調子はどうだ? 昼間に外出してたって? ちゃんと防寒した? 張り切りすぎたのか?」  重たい瞼を開けて声をかけたら、矢継ぎ早に質問が来た。

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