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第2話
せわしないなと思う。
でもこういう人だとも、知ってる。
せわしないけれど優しくて、忙しくて、気になることはその場で解消してしまいたい人なんだ。
ああ、いやってほど、よく知っている。
「チヨ?」
千代田 洸 、という名前からついたあだ名を、今ここでも、当たり前のように呼ぶ。
自分のことは「先生」と呼ばせようとするくせに。
「今、目が覚めた。頭痛い。昼間は調子よかったから外行ってた。ちゃんと脱ぎ着できる服で行った。張り切ってない。普通」
答えながら、手渡された体温計を脇の下に挟む。
それから心音と脈拍と血圧と、瞼裏の色や肌の張りを確認される。
先輩の手は優しい。
でもあの頃のような熱はない。
記憶の中にあるのよりも、少しかさついた手。
「帰ってきてすぐの簡易検査には、異常なかったんだよね。風邪……って感じでもないな。やっぱちょっと疲れたか……どれくらい出かけてた?」
「バス乗って……三時間くらい、かな」
「家に帰ってたのか?」
「や。買い物」
ぴぴっと電子音が鳴ったので、体温計を返す。
先輩は眉を上げて、思わしくないってことをオレに伝えた。
白衣のポケットに体温計を入れて、カルテを書き込む。
「寒気があったって? 今は?」
「ない。けど、熱いしダルい」
「三時間も散歩行くのは、まだちょっと早かったみたいだな。寒いとそれだけでも体力使うから、疲れるんだよ。来週は外出禁止」
「へーい」
買いたい物はちゃんと買うことができたし、別に冬に出歩くのが好きなわけじゃない。
病室にいることは苦痛なタイプじゃないから、それはいい。
けどいつもの癖で面倒くさい感じに返事をしたら、こつんと小突かれた。
「無理をしない。お前の身体だよ」
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