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第7話
「そんでさあ、佐藤くん。かいがいしいのはいいけど、君もケガ人だよ~」
ピリリとテープを切る音と点滴の外された感じがして、ふ、と目が覚めた。
いつの間にかやってきた看護師がてきぱきと処置をしている。
「だって、まだ、チョコ先輩と話してないんですよ、今日」
「そうは言っても、やっと歩行器から松葉杖になったとこでしょ? 無理したら逆戻りよ? そろそろ戻って横になりなさいね」
「ぅええええええ」
「……佐藤?」
ぼんやりした視界に、ここ数日目に入っていた持ち運びゲージみたいな歩行器がない。
でも声はする。
オレの右手を優しく握っている手は間違いなくバカな後輩、佐藤の手だ。
点滴の間、また転寝していたらしい。
寝入りばなに指をマッサージしてくれていたのは、夢じゃなかったんだ。
「先輩、起きた? 点滴終わったから、外してもらったよ」
「あとで検温に来るけど、佐藤くんはそれまでにお部屋に戻ってくださいね」
「はーい」
返事だけはいいこの返事をして、佐藤が看護師を見送る。
ホントに、いつの間にか人に好かれてる得な性質してるよなって思う。
「今日は何勝?」
手をのばしたら当たり前のように、ストローがセットされたペットボトルが渡される。
ありがとうと礼を言って、一口飲んだ。
眠っている間に喉が渇いていたらしい。
なんだかすごく旨く感じて、続けてごくごくと飲む。
「今朝から、松葉杖になって」
オレの様子を見ながら、佐藤が口を開いた。
「ああ、そうみたいだな。おめでとう」
「いつもみたいにしてたら、安定悪いって怒られたから、勝負は流れちゃった」
「じゃあ、もう、いいんじゃねえの?」
「でもさあ、最近やっと勝率上がってきてたのに」
「それ呆れられてると思う」
「俺の気持ちが認知され始めたとこだったんですよ?」
しれっとそう言うバカな後輩に、ため息が出た。
なにが『俺の気持ち』だ。
オレが入院したのはこいつのリハビリが始まったころで、できるだけ動きたいからと歩行器でわざわざ通ってきていた。
それも、できるだけ時間をかけるとか言いだして、じゃんけん勝負をしながら。
そのじゃんけんだって、「チョコレートだからね!」という理由でチョキしか出さないなんて、勝負にならない勝負。
何か願掛けしているらしいっていうのは、先輩から聞いたけど、こいつの口からは出てこない。
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