9 / 9
第9話
「あんたはっ! もう、なんで? こんなの買いにいって、熱出してちゃダメじゃん! 自分の体、大事にしてよ!」
「してるって。っていうか、お前が食いたいって言ってたし……今日だからさあ、やりたかったんだよ、お前に」
そろそろこの関係をはっきりさせたかったっていうのもあるけど。
オレがしてやれることで、お前が希望するなら、叶えてやりたいじゃん。
あの時、一緒に談話室でテレビ見ながら、お前が言ったんだ。
「じゃなくて……ああ、もう、だから! 俺が食べたいって言ったのは『チョコ』だよ!!」
え?
だから、買ってきて、渡して……え?
『チョコ』って……
「……え??」
自分を指さしてバカを見たら、こくこくと大真面目な顔してうなずかれた。
がああああああって、顔が熱くなる。
体調不良の熱じゃなくて、それ以上にかっかして、ぼわって、なった。
「気づいてなかったの?」
笑っていいのか泣いていいのかわかんない。
くっきりはっきり顔にそう書いて、佐藤がオレを覗き込む。
「告ったつもりなのにスルーされたから、俺、振られたんだと思ってた……」
「そんな遠回しな告白、気がつく訳ねえじゃん、バレンタイン前に! チョコの要求かと思うだろうが!」
「退院して最初のデートは決まりですね」
「何?」
「チョコを、食う」
にやりと笑って、佐藤は言いきった。
はい。
今度は間違えません。
だからお互いに、頑張りましょう。
目指せ、健康体、ってことで。
結局、サクラサク、までお預けになったけど、それはまた別の話。
<END>
ともだちにシェアしよう!