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第9話

「あんたはっ! もう、なんで? こんなの買いにいって、熱出してちゃダメじゃん! 自分の体、大事にしてよ!」 「してるって。っていうか、お前が食いたいって言ってたし……今日だからさあ、やりたかったんだよ、お前に」  そろそろこの関係をはっきりさせたかったっていうのもあるけど。  オレがしてやれることで、お前が希望するなら、叶えてやりたいじゃん。  あの時、一緒に談話室でテレビ見ながら、お前が言ったんだ。 「じゃなくて……ああ、もう、だから! 俺が食べたいって言ったのは『チョコ』だよ!!」  え?  だから、買ってきて、渡して……え? 『チョコ』って…… 「……え??」  自分を指さしてバカを見たら、こくこくと大真面目な顔してうなずかれた。  がああああああって、顔が熱くなる。  体調不良の熱じゃなくて、それ以上にかっかして、ぼわって、なった。 「気づいてなかったの?」  笑っていいのか泣いていいのかわかんない。  くっきりはっきり顔にそう書いて、佐藤がオレを覗き込む。 「告ったつもりなのにスルーされたから、俺、振られたんだと思ってた……」 「そんな遠回しな告白、気がつく訳ねえじゃん、バレンタイン前に! チョコの要求かと思うだろうが!」 「退院して最初のデートは決まりですね」 「何?」 「チョコを、食う」  にやりと笑って、佐藤は言いきった。  はい。  今度は間違えません。  だからお互いに、頑張りましょう。  目指せ、健康体、ってことで。  結局、サクラサク、までお預けになったけど、それはまた別の話。 <END>

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