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第9話
旅行から帰ってきて数日が過ぎた頃。
「叶愛! ウエディングドレスができたよ!」
クリスが満面の笑みを浮かべてそんな報告をしてきた。
叶愛の怪我が完治してから、旅行へ行く前に改めて採寸を行ったのだ。叶愛はどんなデザインかも全く知らないそれが、遂に完成したらしい。
夜、入浴を済ませたあと、クリスは早速それを叶愛に着せた。
こちらの世界でもウエディングドレスは白なようだ。スカートの長さは短めで膝丈だった。
純白のドレスは今の叶愛にはもったいないほど綺麗だ。前世の叶愛であれば完璧に着こなせただろうけど。
(あーあ、どうせ着るなら美少年のときに着たかったなぁ……)
別にウエディングドレスを着たいという願望はなかったが、折角着るのならやはり前世の姿で着たかった。それならば、絶対に似合うという自信もある。ドレスが美しいので余計に悔しい。
クリスの手で丁寧に着せてもらいながら、その着心地のよさに感嘆の溜め息を零す。肌触りもよく、シンプルだけれど精巧なデザインのドレスを見れば見るほど自分の平凡さが恨めしい。
クリスはうっとりと叶愛に見惚れているけれど。
「ああ、叶愛、綺麗だよ……」
声を上擦らせ、恍惚とした表情でウエディングドレス姿の叶愛を見つめてくる。本当に、心から愛する花嫁を見るような目で見られて、叶愛は落ち着かない気分だった。
「私も着替えるから少し待っててね」
そう言って、クリスまで着替えはじめた。てっきり叶愛にだけウエディングドレスを着せて見て楽しむのだと思っていたが、そうではないようだ。クリスもしっかりと正装している。
礼服姿のクリスは、やはり文句のつけどころのない美麗な王子様だ。
その麗しの王子様が、愛してやまないというような視線を叶愛に向けてくる。じっと見つめられると、なんだか胸がむずむずする。
クリスは、一枚の紙をテーブルに置いた。
「叶愛、ここに名前を書いて」
「なにこれ?」
「結婚証明書だよ。二人で署名して、これを教会に提出すれば私達は晴れて夫婦だ」
つまり、これは婚姻届ということだろう。
「えっ、僕達、もう結婚するの? クリスの家族に挨拶とかしてないよ?」
「問題ないよ。結婚は私達二人のことなんだから」
にっこり微笑むクリスを、叶愛は疑わしげに見上げた。
(ほんとかなぁ……)
こちらのしきたりなどはわからない。だから、叶愛の考える常識とは違うのかもしれないけれど。
歴史書ばかり読んでいないで、もっと一般常識的な知識も学んでおくべきだった。というか、クリスはわざと歴史書ばかり何冊も渡してきたのではないか。そのせいで叶愛は一般常識についてはなにも知らないままなのだ。
差し出されたペンとクリスを交互に見る。
サインしてしまえば、叶愛はクリスと結婚することになるのだ。そうなれば、本当に逃げられなくなる。いや、もう既に逃げられる気はしないけれど。
「ほんとに僕と結婚していいの?」
「どうして?」
「だって、クリスは王子だし、子供作らなきゃいけないんじゃない? 僕は男だから産めないし……僕以外に女の人とも結婚するの?」
「そんなことするわけないよ!」
食い気味に否定された。
「そうなの? でも子供は……」
「叶愛、男でも子供は産めるよ」
「…………え?」
「もちろん、今のままじゃ産めないけど」
クリスの手が、叶愛の腹部に触れる。ドレス越しに、クリスの指が叶愛の腹をなぞった。叶愛はぴくりと反応する。
「んっ……」
「叶愛のここ」
「ふ、んっ……?」
「わかる? 内側からとんとんってすると、叶愛が怖がって泣いちゃうところ」
「っ、っ……」
「それ以上入れないでって、叶愛がまだ私を迎え入れてくれない、この奥……」
「あっ……」
きゅっと強く腹部を押され、叶愛の胎内がずくりと疼いた。腸壁がきゅんきゅんと蠢いている感じがする。
「ここに、種を埋めるんだよ。その種は叶愛の中で子供を産むための器官に変化する。種が体に馴染んだら、それに精子をかける。そうすれば、女性と同じように男も孕むことができるよ」
「えっ、そ、そう、なの……」
「でもね、叶愛。子供は産まなくても大丈夫だよ。確かに私は王子だけど、別に子供を作らなくてはならない義務はないよ」
「いいの?」
「叶愛が子を望むなら、もちろん私は協力するけどね。私は叶愛さえいてくれればそれでいいから」
「こ、子供は、ムリ……怖い……」
自分で産むとなると、それは到底受け入れられない。
ふるふるとかぶりを振る叶愛を、クリスはそっと抱き締める。
「大丈夫。誰も無理強いなんてしないからね」
「うん……」
「私は叶愛が傍にいてくれるだけでいいよ。叶愛が傍にいてくれるなら、他にはなにもいらないから」
恐らくそれは本心なのだろう。クリスは平凡な顔が好みというわけではなく、叶愛自身に執着している。それは嫌というほど伝わってくる。叶愛は多分もう、逃げられないのだろう。クリスが逃がしてはくれない。
(だったら、仕方ないよね)
覚悟を決め、叶愛はペンを手に取る。
テーブルに置かれた紙に、自分の名前を書いた。文字の読み書きは教えられなくてもできたので、問題はない。
ペンを返せば、クリスも同じく署名する。
「ありがとう、叶愛」
ペンを置き、クリスは叶愛に向き合った。
幸せに満ちたクリスの微笑はキラキラと、眩しいくらい輝いている。
「愛してるよ」
熱っぽく囁かれ、自然な動作で抱き締められる。
きっとこれで本当に、この男に囚われてしまった。
重くのし掛かるほどの愛を押し付けられ、胸焼けするほど愛を囁かれながら生きていくのだ。
しかしそれを、もうそれほど、あんまり、嫌だとも思っていない。
(別に、こんな変態、好きじゃないけど……。この僕が、こんな変態好きになるわけないけど……っ)
嫌だと思わないのは、きっと慣れてしまったからだ。
あくまでも叶愛は、処刑されたくないから仕方なく結婚するだけなのだ。
重ねられる唇を受け入れながら、そんな言い訳で自分を納得させる。
誓いのキスのような甘い口づけは、徐々に深くなっていった。
「はあっ……叶愛……叶愛……っ」
クリスはキスの合間に叶愛の名を熱っぽく囁き、貪るように口内を舌で掻き混ぜた。
彼の掌は興奮した手付きで叶愛の頬を撫で回す。
叶愛の中まで自分で満たそうとするかのように次から次へと唾液を流し込まれ、唇を唇で塞がれ、彼の唾液に溺れそうになりながら叶愛は必死にそれを飲み下す。呼吸さえままならないキスは、角度を変え、何度も繰り返された。
「んっんっ、ぁっ、んっんぅっんんんっ」
ぢゅぱぢゅぱと舌を吸われ、叶愛はくぐもった声を漏らしながらクリスにしがみつき懸命に自分の体を支える。
ガクガクと足が震え、今にもくずおれそうな叶愛をクリスが抱き上げた。キスをしながら移動して、叶愛をベッドへと運ぶ。
口付けたままベッドに下ろされた。長く深いキスに唇も舌も痺れてくる。飲み込み切れなかった唾液が零れ、綺麗なドレスにポタポタと染みを作った。
「んぁっ、はっ、あっ……ドレス、汚れちゃう……」
「……うん。でも、まだ脱がせたくないな……。ウエディングドレス姿の叶愛をもっと見ていたいから」
クリスは叶愛を押し倒し、シーツに組敷かれた姿を見下ろし舌舐めずりする。彼の双眸にははっきりと情欲の色が滲んでいた。
好きでもない、同性の男に欲情されるなんて嫌なはずなのに、彼の視線にぞくぞくと嫌悪ではなく肌が粟立つ。下半身がじんじんと熱を持ち、叶愛は視線から逃げるように身動いだ。
瞳は潤み頬は火照ったように赤く染まっている。まるで期待しているかのような表情を浮かべてしまっていることを叶愛は自覚していなかった。その顔がクリスの劣情を煽っているということも。
「はぁ……可愛い、叶愛……」
「ひっ……んんっ……」
頬から首筋までをつう……っと指先でなぞられて、擽ったいような感覚にびくっと肩が跳ねた。
王子様みたいな爽やかで清廉な容姿をしているくせに、叶愛を見るクリスの目はギラギラと獰猛な熱を帯びている。本当に食べられてしまうのではないかと思うくらい、彼の瞳は肉食獣のそれだった。
そんな目で見られているというのに、叶愛の体温はどんどん上昇していく。ぺニスはじくじくと張り詰め、後孔がきゅんきゅんと疼いた。
まるで発情しているかのような自身の体の反応を叶愛は恥じた。ウエディングドレスなんて着せられて、男に押し倒されているこの状況でこんな風になってしまうなんておかしい。叶愛はドレスなんて着たくないし結婚なんてしたくないし男で変態のクリスのことなんて好きではないのに。
こんな反応をしてしまったら、好きな人と結ばれて喜ぶ花嫁みたいではないか。
(それはない! 断じてない!!)
じんわりと下腹に熱が蓄積していくのを感じながら、叶愛は懸命に理性を保とうとシーツを握り締める。
八つ当たりのようにキッとクリスを睨み付ければ、彼はなぜか頬を上気させ呼吸を乱した。
「この状況でそんな風に睨み付けられると、なんだかいたいけな花嫁を奪って無理やり襲ってるような気分になるよ」
「ひっ、なんでそれで興奮してるの!?」
「ごめんごめん。叶愛はこれまでもこれからも私だけのものなのに、奪うなんておかしいもんね」
そんなことは気にしてない。というか結婚は渋々承諾したが、彼のものになった覚えはない。
「私だけの叶愛……私の可愛い花嫁……」
「んんっ……」
再び唇を重ねられ、はむはむと啄まれる。クリスの唇は顎を辿って下へと下がり、じゅるっと首筋に吸い付いた。微かな痛みと共に痕を刻まれる。音を立てながら何度も皮膚を吸われ、鬱血痕を残されていく。唇は更に移動して、剥き出しの鎖骨を甘噛みされた。
「ひゃんっ」
「んっ……叶愛は美味しいね。ほんとに食べちゃいたい」
「美味しい、わけ、ない……っ」
「美味しいよ。甘くて、柔らかくて、食べたくて堪らなくなる……」
ドレスの胸元をずらされ、肌を晒される。
「ほら、ここなんてとっても美味しそう……」
露になった胸の突起をうっとりと見つめ、クリスはそこへ顔を近づける。
はむりとしゃぶりつかれ、叶愛は甲高い声を漏らした。
「やぁんっ、あっあっ、やだ、あぁんっ」
はむはむと柔らかく歯を立てられ、じわりと快感が広がる。
「んっ、美味しい……甘くて、こりこりで……」
「ばかばか、あっひぅんっ、恥ずかしいこと言うなってぇっ、んっんぁあっ」
快感に背中が浮き上がり、まるで催促しているかのように胸を突き出してしまう。恥ずかしいのに、体がびくんっびくんっと跳ねて止まらない。
クリスの唾液で卑猥に濡れて光る自分の胸元が視界に入り、叶愛は羞恥を募らせる。
「ふっ、うぅ……っ」
「恥ずかしい、叶愛?」
「恥ず、かしいよ……っ」
「叶愛の肌、赤く染まって……白いドレスが映えてすごく綺麗だよ」
「っ、も、そういうの言わなくていいからっ……」
「照れてるの? 可愛いね、叶愛」
「べ、別に、照れて、なんて……っ」
叶愛は顔を真っ赤にして唸った。
可愛いだとか綺麗だとか、そんな誉め言葉は前世で散々言われ慣れている。今さら照れたりなんかしない。ただ、クリスに言われるとむずむずして落ち着かなくなるだけだ。断じて照れているわけではないと、意味もなく自分に言い聞かせる。
頬を染めてそっぽを向く叶愛はクリスの目には照れているようにしか見えず、クリスは締まりのない笑顔を浮かべた。
「可愛い、可愛い叶愛っ」
「ひゃっ、ぁうんっんっ」
がばりと抱きついてきたクリスに体をまさぐられる。散々身悶えたせいで捲れ上がってしまったスカートの裾から手を差し込まれ、太股を撫でられる。内腿をなぞられ、擽ったいような快感にぞくぞくっと震えが走った。
クリスの指が、焦らすような手付きでゆっくりと下着を下ろす。既に勃ち上がっていたペニスが、ぷるりと飛び出した。
「ここも美味しそう。味見させてね、叶愛」
「ひぁあっ」
蕩けた瞳でペニスを見つめたかと思えば、クリスは躊躇いなくそこへ顔を埋めた。パクリと口に含まれる。ぬめった粘膜にペニスを包まれ、甘い快感が走り抜けた。
「あっあっあひぁあっ、ぬるぬる、するぅっ、んっあっあっあぁんっ」
ちゅぽっちゅぽっと舌を絡ませながら口で扱かれ、叶愛は顎を反らせて快感に身をくねらせる。
クリスはペニスをしゃぶったまま、用意していた潤滑剤を指に掬いそれをアナルに塗りつけた。
たっぷりと粘液を塗り込まれ、すっかり慣らされた後孔はひくりと口を開けてそれを飲み込んだ。粘液と共に指が中に差し込まれる。ぐぷぐぷと挿入される指を奥へと誘うように内壁が蠢いた。
ペニスを口内の粘膜で擦られながら腸壁を指で刺激され、両方から与えられる強い快感に叶愛はただ翻弄される。
「あっあっひぁあんっ、きもちぃのっ、いっぺんにされたら、あっあぁっ、い、くぅっ、あっあっあっ、いっちゃ、あっひぃんっ」
叶愛はすぐに絶頂へと追い上げられる。
射精を促すようにペニスを吸い上げられ、どっと先走りが鈴口から溢れた。
「いくっ、んっんっんん~~~~~~っ」
びくびくっと腰を浮かせながら、叶愛はクリスの口内に精を放った。
吐き出された体液を、彼は当然のことのように飲み干す。
ちゅるりと残滓まで残らず啜られ、叶愛はぷるぷると肩を震わせた。
射精の余韻に陶然となる叶愛だが、後孔に埋められた指を動かされまた快楽の波に飲み込まれる。
「あっあっやあぁっ、いった、ばっかりなのにっ、んっあっあぁっ」
「中ぎゅうぎゅうで痙攣してるね。おちんちんでイッたばかりなのに、中でもイッちゃいそう?」
いつの間にか指を増やされ、三本の指でこりゅこりゅと膨らみを捏ね回され、叶愛は抗うこともできず絶頂へ駆け上がる。
「いくっいくっ、また、いっ、あっあっあああああぁっ」
きつく中を締め付けながら、今度は射精せずに達した。
「叶愛の中、すごく熱いね」
「んんぁあっ」
肉襞の感触を楽しむように、クリスはぐるりと指を回す。
「それにすごくきつくて……でも、ぬるぬるで柔らかい……」
「はっあっあっ、やっんんっ」
「こんなに小さいのに、いつも上手に私のものを咥え込んで……」
「あっはぁんっ、んっんーっ」
「私が教えたんだ。ねぇ、叶愛。快楽を知らなかった叶愛に、私が教えたんだよね。叶愛はこれまでもこれからも、私しか知らないんだよね」
熱を込めた囁きには、そうでなければ許さないという圧をひしひしと感じた。
叶愛の意思とは関係なく、こんなことはクリスとしかしないだろう。叶愛とこんなことをしたがる物好きはクリスしかいないのだ。もしいたとしても、クリスが叶愛に執着している限り、クリスが自分以外の者が叶愛に手を出すことを許さないだろう。
「そ、だよ……こんなこと、クリスとしか、ひあぁっ」
ぬぽんっと指を抜かれ、その刺激にも叶愛は甘い悲鳴を上げる。
「嬉しいよ、叶愛。私だけの叶愛……」
どろどろした愛を吐き出しながら、叶愛の両脚を広げて抱える。
解された後孔に、取り出した陰茎を押し付けられた。
ウエディングドレスを乱され、着たまま体を繋げられることに叶愛は強い羞恥を覚える。こんな綺麗で神聖ささえ感じる衣装をけがしてしまう。汚してはいけないものを汚してしまう背徳感にくらくらした。
クリスは寧ろ、けがすことに興奮しているようだ。叶愛を見下ろす瞳は隠すこともなく劣情を孕んでいる。
「好きだよ、叶愛。愛してる……」
「っあ、待っ、あっひ、あっあっあ────っ」
制止の声は届かず、剛直がめり込む。
ずぷずぷずぷ……っと、肉壁を押し広げる感触をじっくりと楽しみながら、クリスはわざとゆっくり胎内を犯していく。
「はっひぅっ、んっあっあぁっ、やぁっ」
「っ、ああ、叶愛の中、私のものを包み込むみたいに吸い付いて、すごく気持ちいいよ……っ」
クリスは頬を紅潮させ、艶を帯びた息を吐く。叶愛の顔に何度もキスを落とし、時間をかけて自身を埋め込んでいった。
じりじりと胎内を満たされる圧迫感を、叶愛は肩で息をしながら受け入れる。
「あっあっ、はっぁんっ、おっきぃ、おなか、いっぱいなるぅっ……」
「そうやってまた、私を煽るような可愛いことを言って……。ウエディングドレスがぐちゃぐちゃになるくらい激しくされたいの?」
「っな、あっ、そんなこと、あるわけな、ああっあっあぁんっ」
「本当かなぁ? ちょっと強く突いたら、叶愛の中が嬉しそうにびくびくしてるよ?」
「ちが、ひっあぁっ、うれしく、なんて、あっやっんあぁっ」
否定する言葉とは裏腹に、ずんっと内奥を穿たれると直腸が悦ぶように蠢いた。勃ち上がったペニスから先走りを漏らし、きゅんきゅんと中を締め付けてしまう。
口でなんと言おうと、体はとっくにクリスから与えられる快感に陥落してしまっていた。
「じゃあここは? ここ擦られるのは嬉しい?」
「ひゃうっんっあっああぁっ」
ごりごりと亀頭で押し潰すように前立腺を嬲られ、叶愛は目を見開いて背中を弓なりに反らせた。
「んっひぃんっ、あっあっやあぁっ、そこ、そんなに、しちゃ、あっあぁっあっ」
「嬉しい? 中、すごい動いてる……。おちんちんもぷるぷるして、可愛いね。ねぇ、叶愛、気持ちいいよね?」
「ぃ、きもちぃっから、あぁっあっ、ま、待っ、そこぉっ、固いので、いっぱい擦らないでぇっ」
「っ、本当に、叶愛は……なにもわかってないんだから。そんな風に言われたら、逆効果だって……っ」
クリスは重点的に敏感な膨らみを擦り上げ、強烈な快楽で叶愛を追い詰めていく。
「ひぁあっあっんゃぁあっ、きもちいぃっ、クリス、あっあぁっ、いっちゃ、いく、ぃっ、~~~~~~っ」
執拗に前立腺を攻められ、叶愛はなす術もなくまた絶頂を迎えた。
勝手に肉筒がきつく締まり、腸壁が擦れてまた新たな快感を生む。気持ちいいのが終わらなくて、叶愛はシーツの上でもがいた。
焦点の合わない瞳に涙を浮かべ、快楽に震える叶愛を見下ろしクリスは恍惚と微笑む。
「可愛い、叶愛、叶愛、全部、私だけのものにしたい、叶愛の全部が欲しい……っ」
「んぁあっ」
いきなり片脚を持ち上げられ、ごりゅっと中が擦れてその刺激にペニスから僅かに蜜が漏れた。
持ち上げた足はクリスの肩に乗せられ、もう片方の脚をクリスが跨ぐ。その状態でクリスが腰を進めれば、ぬぷぷぷ……っと剛直が深くまで捩じ込まれた。亀頭が最奥の入り口に突き当たる。
「ひうぅ……っ」
「叶愛、この奥に入れさせて、ここ、叶愛の一番奥に私を入れて……っ」
「あっひっ、やぁっ、だめっ、ぐりぐり、しないでぇっ、や、そこはやなのっ」
「ウソはダメだよ。叶愛のここは、私のものを受け入れようとお口を開けて吸い付いてくるよ?」
「っ、てない、そんな、あっあっあっんゃあんっ」
クリスが腰を回すと、亀頭が奥にめり込む。固い肉塊をごりゅごりゅと擦り付けられ、恐怖と快感に涙が零れた。
怖いのに、体は彼の欲望を奥へと飲み込もうとしている。体が受け入れることを許してしまっている。
「んひぁっあっ、入って、くるぅっ、やっ、だめぇっ」
「叶愛、本当にダメなの?」
「っ、ひっうっ、うぅ……っ」
ここで即答できなかった時点で、拒んでいないのと同じことだった。
「叶愛、ね、私を受け入れて」
「あっ、うっ……で、でも……っ」
「お願い、叶愛」
切なげに潤んだクリスの瞳がまっすぐに叶愛を見つめる。
クリスは叶愛の腹部をすりすりと摩った。
ただ腹を撫でられているだけのはずなのに、その内側がむずむずと疼く。
「叶愛のここに私を入れて、入りたい、ね、いいって言って、叶愛」
クリスの甘い声音に鼓膜がじんじんと痺れるような感じがする。脳がとろとろに溶けていく。体もぐずぐずになって、クリスと混ざり合っているような感覚になる。
混ざっているのなら、今さら、彼を拒む意味がない。
思考が蕩けて、気づけば叶愛はそんな風に考えていた。
そんなわけないと正気に戻るよりも先に、叶愛は口を開く。
「いいよ、入れて……」
それを聞いたクリスは極上の笑みを浮かべる。
「嬉しいよ、ありがとう、叶愛……」
「んっ、ひっあっあっ……」
叶愛の脚を抱え直したクリスは、ぐっと腰を進めた。
ぐぐぐぐ……っと亀頭が奥の窄まりに押し込まれていく。
「あっ、──────っ!」
ぐぽんっと最奥を突き抜けた。その衝撃に叶愛の体がびくんっと跳ねた。
ぐちゅぐちゅと奥を捏ねられ、強すぎる快感に目の前がチカチカする。
「ひっ、ひぅっ、く、ひぃんっ……」
「っは、ああ、叶愛の奥に入れた……熱くて狭くて、気持ちいい……ぎゅうぎゅうって締め付けてくる……っ」
「はひっ、ひっ、ふっ、ふぅっ、はっあっ」
「叶愛、叶愛、大丈夫?」
「っ、うっ、はっ……あっ、ひ、ぃっ」
「ダメだよ、叶愛、ちゃんと私を見てくれないと」
「んあっ、ひああぁっ」
奥から抜き出された剛直を再び強く突き入れられ、叶愛はクリスに意識を引き戻される。
「折角叶愛が一番奥まで私を受け入れてくれたんだ。大切な記念の日だから、しっかり意識を保っててね。叶愛の記憶に刻み込んでほしいから」
「あっあっあっんっああっ、あっひうぅっ」
ぐぽっぐぽっぐぽっと断続的に最奥を穿たれ、叶愛は強烈な快楽に喘ぐことしかできない。腕を動かし身を捩ろうとするけれど、しっかりとクリスに捕まえられて逃げられない。
「いくっ、いくっ、あっあっあ~~~~~~っ、あっ、待ってぇっ、いってる、いってるからぁっ」
「はあっ、すごい締め付けっ……いってる叶愛の中でじゅぽじゅぽするの気持ちいいよ……っ」
クリスはうっとりとした表情で律動を続けた。興奮した様子で抱えた叶愛の足をストッキング越しにねぶり、柔らかく歯を立てる。
「んひっぃああっ、やあぁっ、舐めないでぇっ、あっあぁっあっ、いってる、もういったのっ、いったからぁっ、もぉやぁっ、こわいぃっ、おくじゅぼじゅぼしないでぇっ、あっあーっ」
叶愛は涙を流し首を振り立てる。
「っああ、可愛い叶愛っ、もう少し、あとちょっと我慢して……っ」
泣いている叶愛を見て息を荒げながら、クリスは腰の動きを速める。射精に向けての本格的な抽挿をはじめた。
その間に、叶愛は何度も絶頂を迎える。ペニスから精液を漏らしたり漏らさなかったりの絶頂が絶えず繰り返された。
「んゃっああぁっ、おかしくなるぅっ、あっあっ、くりす、くりすぅっ」
「はっ、叶愛、出る、叶愛の一番奥に出すよ、叶愛、叶愛……っ」
ぐっぽりと奥に嵌め込まれた亀頭から、熱い体液が吐き出される。
胎内に精液を浴びせかけられ、叶愛は爪先を震わせその愉悦に浸った。何度も精液を己の身に受け入れ、満たされることに快感を覚えてしまった。
陶酔したようにぼんやりと、ぐちゃぐちゃに乱れたウエディングドレスを見下ろす。叶愛の汗と精液を吸い込みじっとりと濡れたウエディングドレスは酷く猥りがわしい。
息を整えていると、上げていた脚を下ろされた。と思ったら、ぐるりと体を回転させられる。陰茎を埋め込まれたままうつ伏せにされ、叶愛は驚き背中に覆い被さるクリスに顔を向けた。
「あっあっ、なに……っん、ひぃぃんっ」
真上から突き立てるように再び体積を増した剛直で胎内を貫かれ、叶愛の口から悲鳴が漏れた。
目尻から流れる涙を、クリスがぺろりと舐める。瞳を蕩けさせ、クリスはぱちゅぱちゅと打ち付けた。
「叶愛が怯えなくなるように、奥にしっかりと私の形を覚えさせようね。こうして奥をぐぽぐぽってされるのが気持ちいいって体に教えて、これからは叶愛が自分から奥に入れてってねだるようになるまで、今日はいっぱい奥を抉ってあげるからね」
「ひっあっ、やっ、やだぁっ、も、奥はだめ、んっひぅんっ、奥で気持ちよくなるのやあぁっ、あっあっああぁっ」
「大丈夫だよ。叶愛の中は奥がいいって私のものを嬉しそうに飲み込んでるから」
「あ゛っああっ、ふかいぃっ、おく、おくまで、はいってぇっ、ひあぁっあっ、きもちく、しないでぇっ、はぁんっあっあっあーっ」
ごちゅごちゅごちゅっと繰り返し最奥を攻め立てられ、快楽に身も心も支配された叶愛はやがて拒絶の言葉を口にすることもできなくなる。
それから叶愛は朝になるまで解放されなかった。 気絶することも許さず、クリスは一晩かけ言葉通りに叶愛の記憶と体に自身を深く刻み付けたのだ。
ウエディングドレスはどろどろぐしゃぐしゃに汚れ、見るも無残な姿になっていた。クリスに仕立ててくれた人に謝らせたいと叶愛は思った。
げっそりしている叶愛とは反対に、クリスは艶々と輝いているのがまた腹立たしい。
「愛してるよ、叶愛。ふふ、これから叶愛と私は夫婦になるんだね」
結婚証明書をうっとりと見つめながらクリスは言う。叶愛はなんだか無性にそれを破り捨てたくなった。
「楽しみだなぁ、叶愛との新婚生活。結婚してしまえば、もう誰に憚ることもなくイチャイチャできるね。だって夫婦なんだから。夫婦が仲良くしてるのはいいことだもんね。それを邪魔するなんてあり得ないもんね。つまり一日中イチャイチャしてたって誰にも文句は言われないよね」
そんなことはないだろう、と叶愛は思ったが彼の呆れた発言に突っ込む気力もない。
「これから毎日ずーっと叶愛と一緒にいられるんだね。夫婦になるってことは、妻は夫のものになるってことだよね。叶愛を独り占めできるなんて幸せだなぁ。ずっと私の腕の中に入れておこうか。叶愛を一日中抱っこしながら過ごすのって素敵だよね」
クリスはつらつらと頭のおかしいことを夢見る乙女のような顔で言っている。
そんなことされてたまるかと、叶愛は断固拒否する所存だ。
しかし好き勝手なことを言われても、反論する元気もない。今の状態では抵抗もできない。
どうしよう、と叶愛は思った。
毎日動けなくなるほど抱き潰されたら、クリスのいいようにされてしまうではないか。
本当にずっとクリスの腕に囲われて生活させられることになったら、と想像して叶愛は青ざめた。
クリスの手にある結婚証明書が悪魔との契約書のように見えた。
自分はサインしてはいけないものにサインしてしまったのではないか。
ベッドに寝そべりぶるぶる震える叶愛にクリスが顔を向ける。
「これからもよろしくね、叶愛。一緒に幸せになろうね」
そう言って微笑むクリスはやはり見た目だけは完璧な王子様だった。中身も完璧な王子様であれば、叶愛も幸せな未来に思いを馳せることができたのかもしれないが。
「叶愛が寂しい思いをしないように、毎日たくさん愛を注ぐからね」
その愛はあまりに重すぎて、叶愛の胸には不安しかなかった。
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