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お前を隠す

お前ってやつはいつもそうだ。 どんな相手でも、うまくやれる。 お前は俺を好きだと言うが、お前はべつに俺でなくともやっていける。 背の高いやつも、痩せたあいつも、お前にかかればみんな、なるようになる。 お前は相手に寄り添うことができる。 変幻自在にかたちを変えて、相手のよいようにしてやれる。 だから、優しいやつだとみんな言う。 ああ、そうだろう。そうに違いないさ。 だがな、そうやってこの俺も丸め込めると思うなよ。 俺は、俺だけは、そういうお前を閉じこめてやる。 そうすればもう、誰もお前に触れられない。 お前のなめらかな絹の肌に触れるのは俺だけだ。 お前を綺麗によっつに畳んで仕舞ってやる。 行儀よくしていたらいい。 お前はなにもしなくても美しい。もう誰かに使われなくてもいいのだ。 そうして俺のうちがわに長く居座ってくれ。 この想いが、お前にきちんと届くまで――俺はお前に包まれるだけでなく、お前を独り占めすることのできる箱なのだ。

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