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第1話

「オレ、卒業したらすぐ繋さんと子育てしたいっす」 部活の引退試合の後、雅美は俺に言った。 「赤ちゃんって10ヶ月お腹にいるんですよね?チロ先輩がお腹が目立ってくるのは5ヶ月くらいからって言ってたから、もう少ししたら妊活してもいいと思うんです」 その凛とした目がまっすぐに俺を見て言ってくる。 出会った時より女の子っぽく、中性的な身体になったけどそのキリリとした美しい顔立ちはそのままの雅美。 あぁ、やっぱり綺麗だな。 なんて、俺は見蕩れていた。 「……繋さん、聞いてますか?」 「いたたたっ、聞いてたよ、聞いてたから……!!」 こうして頬をつねられて睨まれるのも幸せで。 俺は可愛い奥さんの尻に敷かれていた。 「でも、いいの?俺はせめて俺が大学を卒業してからでもいいんじゃないかって思ったんだけど……」 「それはオレも考えました。けど、繋さんいつどうなるか分からないじゃないすか。オレはもうバスケに未練ないんで早く繋さんとの子供に会いたいんです」 「雅美……」 多分、こないだ急死した親戚の事があったからだと俺は思った。 父のきょうだいの息子さんで俺とふたつしか違わない年上の人だったんだけど、兄ぃみたいにその命で災害からこの地を守ってくれた。 俺も雅美も何度か顔を合わせていた人だったし奥さんの事も知っていたから、葬式のあとふたりして落ち込んだ時があった。 いつかは俺もそうやって突然死ぬしれない。 その日が来る前に、俺は次期頭領として少しでも多くの子供を残して俺の家の血を絶やさないようにしなくちゃいけない。 雅美はそれを俺以上に受けとめてくれているんだと思うと、胸が熱くなった。 「……分かったよ。俺も覚悟を決める。妊活、一緒に頑張ろう」 「……はい……!!」 あぁ、俺にだけ見せてくれるその笑顔。 愛おしくて愛おしくてたまらない。 俺は思わず最愛の妻を抱き締めていた。

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