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 甘いキスを強請るとかそんなテクニックなんて持っていなくて、いきなり飛び上がったせいで口づけをすると言うよりもただそこがぶつかり合っただけのような、そんな触れ合いだった。  胸に当たる金属の冷たさとは反対に、クラドの唇は火傷しそうなほど熱くて……  小さく差し込む雷の光に銀に光る瞳を盗み見ながらその体に縋りついて、引き剥がしてこようとした腕に負けないように全身を押し付け、声を上げようとした唇を開かせないように必死に吸い付く。 「は  る  」  お互いの息が跳ねて、最後の悪足掻きとばかりにオレを離そうとした腕を取って頬を寄せた。  皮の厚い掌は固くて熱くて、濃いクラドの匂いが漂っていて……  暗い闇の中で銀に光る瞳に熱が宿ったのが見て取れた瞬間、仄暗い喜びにオレの腹の奥が甘く焦れるような感覚を訴えた。  床に広げられたマントは湿気っていたけれど、荒い息を吐きながら覆い被さってくるクレドの体温のお陰で寒さは感じることはなく、それどころか熱い手に体の最奥を漁られて、その熱さで汗が流れるほどだ。  鍛え上げられた固い筋肉と、オレよりも幾分毛深いと思わせる体毛と……ふいに触れる尾が擽るように肌を撫でて、悶えたくなるような快感を与えてくる。そして太腿に当たる怯んでしまいそうになるほどのサイズのモノに、オレの思考は完全に停止してしまって、ただ必死にその体に縋りついてクレドの指が与えてくれる快感に声を上げるだけだった。 「  ──っ、ぁ  あっ」  剣を振るのに慣れた指はごつごつとして無骨で、けれどそれでナカを擦られて拡げるように動かされた時にはやけに甘い甲高い声が出てしまって、恥ずかしさに我に返って慌てて口を押える羽目になった。  クレドに触れてもらいたかったのに、掌を満遍なく使うようにして肌を撫で上げられると、肌が粟立つような震えあがるような、そんな痺れが体中を覆って……  体の深くにクラドが入り込んで、オレの体で気持ち良さを感じてくれているのだとわかった瞬間はこの上もなく幸せだった。  この黒い騎士がオレだけを熱い目で見て、興奮して、息を荒げて……  普段の余裕のある風は欠片もない、ただの牡としての本能のままにオレを貪って、穿って、吐き出して、取り繕った部分のない感情の吐露に嬉しさを感じたけれど、それは一瞬だけの浅い幸福でしかない。  黒い雲が過ぎ去った後の明るい室内で、髪が乾いたオレはどこを見てもかすが兄さんと似ているとは思えなくて、もう同じ手は二度と使えないだろうし、クラドはそう言った目でオレを見てもくれないんだろうなって思ったら、好きな人に抱いて貰えたのにぽっかりとした穴が開いたような虚しさだけが残って、涙を堪えることができなかった。

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