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 もちろん、それは俺一人の思い上がりではなく、端々に感じるはるひの好意だったり、時折漂ってくる発情を示す匂いをきちんと確認したからだ。   けれど『神の箱庭』と呼ばれるこの世界の外から来た生き物は、獣人達に比べて酷く成長が緩やかで……いつまで経っても大きくならないはるひに焦れて、かすがに何歳になったら成人なのか? と尋ねたことがあった。  二十歳と言われて驚いてしまったのは事実だった。  俺達獣人は性的な成熟も早く、どの種族でも遅くとも十五の年には成人を迎えるものだったから、それから更に五年もかかるのかと。  二十といえばもう何人か子供がいてもおかしくない年だというのに。  それでも、二十歳で成人と言われてしまえばそれに従わない訳には行かず。焦れるような恋心と、もしかしたらはるひの好意が他に向いてしまうのではないだろうかという怯えと共に指折り数える日々が続いて……  だから、あの雨の森番小屋の中で、はるひが腕に飛び込んで来た瞬間は今までの人生で感じたことがないほど舞い上がっていたし、濃く鼻先を掠める熟れた性的な匂いに一瞬で理性がもぎ取られてしまった。  雨でぐっしょりと濡れて不安そうにこちらを見上げながらも、その目の奥は発情を示して潤んで……  儚げなのに淫靡、  幼いのに熟れた姿、  誘う匂いに抗えきれずにその細い体を押し倒して、甘い肌を堪能するのを止めることができず。  白大理石のような体を見下ろして、これからここに自分のものだと痕をつけることができるのかと思うと、欲望に関することしか頭に残らなかった。  口づけて咥内を散々犯して堪能して、飲み込み切れずに溢れたそれをすくって後ろの潤いの足しにしようとした。  神に呼ばれてこちらにきた只人は、男巫女を除くと後唇が濡れないらしい。  後唇が濡れれば、子をなすことができる証拠であるのだが……はるひに対しては最初から考えてもいなかったことだ。  だから、這わした指先が後唇から溢れ出す蜜で濡れた時は、夫婦ではなく家族になれる希望で頭の中が沸き立っていた。  抵抗はみせるもそれもあってないようなもので、俺が触れるとはるひは極上の楽器のように美しい声を出した。  小さなミニバラの蕾のような胸を唾液を絡ませた舌でいたぶり、溢れ出す蜜でぐずぐずの後唇は丁寧に解す。  一本だけでも頑なに入れようとしなかったそこを、ゆっくりと宥めて侵入し、二本の指で広げては緩み具合を確認する。  俺が付きっ切りで見張っていたのだ。  はるひは初めてで、そのすべては花びらのように傷がつきやすい。  だから俺は指で解した後を丁寧に舌も使って解し、その匂いと味を堪能しつつ繰り返しはるひを感じさせた。  真っ白な体が力なく俺のマントの上に沈み、紅潮した体は白と赤のコントラストで透き通るような美しさを見せている。  繰り返しの愛撫で尖り切った乳首と、はちきれんばかりになって涎を垂らす可愛らしい股間と。  どうしてすべてを同時に堪能できないのか と、苦悩で眉間に皺が寄る。 「 ク、クラド……さ、ま。んっ……どうぞ   」 「どうぞって……ここから先をわかっていっているのか?」  そんな教育は施されないはずなのに、はるひは両膝をそろりそろりと開くと、怯えているのがわかる震える指先で、俺が舐め尽くした箇所よりさらに奥、秘された部分を晒す。  一際濃く立ち上る匂いは、はるひの体の奥から出た純粋な匂いだった。 「  っ、ください」  蚊の鳴くような声が聞こえたのは耳が良かったからだ。  武者震いなのかなんなのかわからない震えを押さえつけながら、反り返って臍を叩く勢いの熱い杭を手に持って体を沈めた。  俺が与える律動に応えて上がる小さな嬌声や、後唇から溢れる蜜のような愛液の匂いに長年律してきた衝動はすべて薙ぎ払われて、胸で控えめに主張する薔薇色の乳首を吸い上げることになんの躊躇も感じなかった。  お互いの体液が溶け合って、皮膚の境目がわからなくなるような、そんな至福の時間は一瞬で過ぎ去ってしまって、雨脚が弱まって行くことがこんなに厭わしいと思う日が来るなんて……  雨雲を押し退けて差し込む陽光に照らされて、腕の中のはるひの白い肩が眩しく浮かび上がって美しい。無骨で愛想のない俺の体とは違う優美な曲線と、柔らかでふわふわとした髪が愛おしくてたまらなかった。  愛を交わし終えて満ち足りてはいたが、ただ古びて埃臭い森番小屋なんて場所で衝動的にはるひを奪ってしまったことに対して、申し訳ないというか甲斐性を見せられなかったということが、口惜しくて仕方がない。

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