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その頷きがなんなのか聞こうとする前に、ロカシは素早い動きで王の前に跪いて胸に手を当てて深く頭を垂れ、「恐れながら 」と口にする。
上位の者に対して懇願する際に使われる体勢をとるロカシに、何事かと慌てそうなっていると王の手が制止を示したために何も言い出せずに見守るしかできない。
「許す、何を請う?」
「ありがとうございますっ!私、ロカシ・テリオドスは陛下が望まれるならば、守りも攻めも富もっ お望みの物をっ ですから、はるひ様とっ! はるひ様を我が領に お許しを、いただけたら 」
「ロカシ⁉︎」
急に何を とその腕を慌てて引っ張り立たせようとするも、ロカシは頑として譲る気配を見せなかった。
「我が領は年中気候も安定しており温暖で、人々も温和な気質で……」
ぱしん と尾が音を立てる。
たいして大きな音ではなかったはずなのに、妙に良く響いて聞こえる音にオレもロカシもびくりと動きが止まってしまった。
「テリオドスは遠いな、そのような場所に遊びに行かせると我が妃が寂しがるだろう」
「あ の 」
「何せ半日会えぬだけで嘆き出す始末だからな」
はは といい笑顔を見せてはくれるが、ロカシは口を引き結んだままだ。
「歓談の邪魔をしたな、なかなか会うことも難しいのだからゆるりとしていくといい」
王は始終笑顔だった。
ロカシの申し出がオレとの結婚を見据えた言葉なのは流石のオレにでもわかる話だった。それを王がそう言う風に解釈したと言うことははっきりと断られたと言うことで……
王が去ったあともロカシは立ち上がらずにその場で項垂れていて、オレが促すようにしてやっと顔を上げてくれた。
エメラルドのような瞳に涙は見えなかったけれど、そこに映る感情のせいか鈍く曇って見える。
「ごめ 一人で突っ走っちゃった ね」
「うぅん」
すっかり冷めてしまった紅茶に口をつける気になれず、その琥珀色の表面が風に揺れて空と浮かない表情の自分を映すのを眺め、それから緩く首を振った。
「これで良かったんだと思う。オレの我儘に巻き込んで、テリオドスからここに来るのも大変なのに……」
「全然っ!何を言ってるの?僕がああ言ったのは君に合わせたんじゃなくて、僕がそうしたいからだよ?僕はヒロのことも君のことも諦めたくないんだ!」
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