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「そろそろ替わろう」 「まだ行け  」 「へばられたら困るんだ」  固い声で言い返されて、テルスは言いかけた言葉を飲み込むようにしてからゆっくりと止まる。  荒く肩で息をしているその姿は、まだ行ける と言いつつも限界だったのではと思わせた。  次はスティオンの抱きかかえられて……  自分で走れると言えればよかったのだろうけれど、獣人とのあまりの運動能力の違いに気まずい思いをしながら俯くしかできなかった。    幾度目かの交代の後、もう一人の騎士団員が合流したためにスティオン達は幾分かスピードを上げたようだった。  オレがこのスピードで走ろうものならあっと言う間に坂を転がり落ちて、そこでおしまいになってしまうだろう。なのにこの三人はそのスピードを維持したまま長い時間を走り続けた。 「はるひ様。麓の村が見えてまいりました」  安堵と、ゴール直前に気を抜かないようにしているのか固い声音でスティオンはそう言うと、「先に行く」と言いおいて更に走るスピードを上げた。 「はは……さすがスティオン様だ」  テルスは今にも崩れてしまいそうな表情でそう言うと、最後までオレを送り届けるために歯を食いしばっていた。  村は栄えてはいたが賑わいはなく、だからと言って住人がいないわけではないようだった。  各村人の家の中からの視線を感じるのだから、ここが廃墟ではないのは確かで…… 「こちらです」   そう先行していたスティオンに示されたのは一軒の宿屋だった。  けれど異様な雰囲気……と言うか、自分が気配を感じることができるのだとしたら、オレは連れてこられた宿の前に立った時の何とも言えない気持ちを表現できたかもしれない。 「お入りください。体を清めてすぐに怪我の治療をいたしましょう」  そう言うとオレが止めようと手を伸ばすよりも早く動き出そうとして……けれどスティオンは突然開けられた宿屋のドアに弾かれるようにしてぶつかった。 「はるひっ!」 「  ⁉︎」  声だけでも染み入るような感覚を思い出させる。  ありえないことだとわかっていながらも、この声の持ち主は間違いなくかすが兄さんだと確信してそろりと視線を動かした。  見上げながら、木で作られた年季の入った階段は年輪以外の部分がずいぶんと削れて、王宮で優雅に歩みを進めていたかすが兄さんではつまずいてしまうのではと、一瞬どうでもいいことが頭に浮かんだ。 「はるひ……っ……ょ……、かった! よかったっ」  巫女として自分を律し始めてから大きな声なんてなかなか上げなかったかすが兄さんが、そう叫びながら宿屋の階段を飛び降りる。

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