264 / 304

2−139

「ここ、は、  オ……私はどうしてここにいるのでしょうか? ここは……」 「はるひの家 だな」  そう微笑みながら言われるけれど、自分の生まれ育った家にクラドがいること、その家も少しずつおかしなことがあることで居心地が悪いと言うか、どうにも気持ちの悪さがあって初めての時のように素直に驚くことができなかった。 「私は、なぜここに?」  気づいたら玄関前に立っていた。  その前は……オレは何をしていただろうか? 「なぜ…… ────っ! クラド様っ! 兄さんっ⁉︎」  はっと飛び上がったオレを銀色の瞳が穏やかに見つめる。  それは黒い瞳から変わってしまったかすが兄さんと同じもので……  何よりもそれが自らが神だと雄弁に告げていた。   「お願いです! 私を戻してくださいっ! 今っ魔人が……っ皆が 皆を、助けてください! 魔人がっ……このままでは被害が  」 「神は人の願いを聞き届けるものだ」  そうだ、この世界の神は人の祈りを聞き届ける。  人の祈りに応えて巫女を召喚し、時には奇跡を見せつける、それがコリン=ボサだ。 「だが私は直接的な介入はしない」 「っ? な、にを……」 「澱に対するための導きはもう与えただろう?」 「そん  コリン=ボサ様が魔人を浄化してくださったら……」  この世を作ったのならば、その力でこの世界を救えばいいだけの話で、わざわざ違う世界から巫女を呼び寄せて力を分け与えるなどしなくても済む話だ。  そうすれば幾人もの犠牲者を出すこともなければ、怪我をする人も、大切な人を亡くして悲しむ人も出ることはない。  愛する人が危険に晒されることもない!  クラドの顔で突き放されたように言われると、まるでナイフで心臓を刺されたかのような衝撃で…… 「な ぜ  ?」  微笑むようにして返された言葉は、目の前の存在が人ではないのだと言うことを思い知らせただけだった。  『はるひ』とひらがなで書かれたプレートが吊るされている。  そこはオレのためにと両親が用意してくれた部屋で……嬉しかったけれど一人寝が寂しかった小さい頃のオレはほとんど足を踏み入れたことのない部屋だった。  そっと扉を押して入ると……  空間だ。  ドアを開けた先に窓があったことは覚えているから窓は存在している、そしてオレのために用意されたベッドも。  けれどそれ以外は何もなかった。 「……」  何色のカーテンが下がっていたかすら思い出せないせいか、窓はぽっかりと口を開けたままで空虚さを隠しもしない。近寄って覗き込んでみるも、六歳だったオレにはこの窓は高すぎてここから景色を眺めたことがなかったから…… 「何もない」

ともだちにシェアしよう!