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第40話(トム)
「彼の力を借りようと思ってね」
長官は預言者を信じて無いから僕を連れて来たんじゃないのか?
「僕はなにをすれば?」
「まずは、預言者、、、ルカの能力を簡単に説明すると、ルカは未来のビジョンを断片的にみる。まあ、詳しくは本人から説明してもらおうか」
「俺の見る未来のビジョンは、まるで映画を見ている見たいだ。ビジョン内の相手に話しかけたり、触ったりは出来ないし、向こうからも見えてないはずだ」
ルカは淡々と説明をする。
「去年辺りから見るビジョンに世界の終末が頻繁に現れた。俺の見えるビジョンは物事よりも人にフォーカスされる事が多い。大きな出来事が起こる時はその中心人物か近い人物。
で、エージェント•ワイルド、エージェント•フォスター、そしてマイケル•バーンズ、君たちのビジョンが現れ始めた」
「マイクの覚醒と世界の終わり?詳しく話して欲しい」
エージェント•ワイルドには恋人のマイケル•バーンズが絡む話だ。
「ビジョンは細切れになっていて全てが分かる訳じゃないけど、、、エージェント•ワイルド、君は、、、来年のクリスマス、、、大規模な戦闘で死ぬ。そしてその時、マイクのネオヒューマンズの力が覚醒する」
「どんな能力?」
「少し見ただけじゃ分からないけど、植物を操ったりするみたいだった。
彼の能力が暴走し地球全体はまるでジャングルになる。
未だかつてない物凄い能力だ。
地球を丸ごと植物が飲み込み、文明は破壊され、人間は植物に押し潰される。
日光も遮る植物の太い枝や葉で、居住地も耕作地も激減して、徐々に事態は悪化。混乱と物資不足も重なって恐らく人口の三分の一は消え去る。
そしてマイケルはパワーを使い果たし樹木の中で深い眠りにつく。
ここからは言いにくいけど、数年後にマイケルはエージェント•フォスターが目覚めさせる。
目覚めたマイケルは君の記憶を失っていて、、、」
エージェント•ワイルドは眉間に深い皺を寄せている。
まあ、そうだろうな。
自分が死に、恋人は記憶を失い、他の男と結ばれる運命なんて1番最悪な未来だ。
「マイクはブライアンと?」
「そう。
マイケルが目覚めたと同時に地球を覆っていたやっかいな植物も消える」
「ご説明中、失礼、えっとルカ君だっけ?」
「あ、はい」
「僕がはるばる中国まで連れて来られた理由がまるで分からないんだが?」
「すみません、では、少し話を戻します。さっき未来のビジョン内の相手に話しかけたり、触ったりは出来ないし、向こうからも見えてないはずだって言ったんですが、、、エージェント•ワイルドが死ぬまでに何度かマイケルとビジョン越しに目が合ったんです。しかも俺の目を見て「もうすぐ」と話しかけて来た」
「それで、僕と何の関係が?」
「あなたは、人の心が読める。だから僕のビジョン内に居るマイケルの心の中を覗いて下さい。俺には彼が何を企んでいるのか分からない」
「マイクは何も企んだりしない!」
エージェント•ワイルドが反発する。
「ええ、でもビジョン内の彼とだけ目が合う。マイケルは俺に話しかけてきた。彼が重要な鍵である事は確かです。
それにあなたが何故死んだのかだけは何度ビジョンを見ても分からない。まるで誰かが隠したかの様に大事な戦闘シーンは見られないんです」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。僕は確かに触れた相手の頭を覗けるが、頭の中の更に頭の中なんか見た事もない!無理だよ」
最近、能力のコントロールを覚えたばかりだ。
「だから、君らをわざわざ中国まで呼んだ」
スミス長官が口を挟んできた。
「この時空ポケットはあらゆる電波がシャットアウトされている。君の能力がダイレクトに使える場所なんだ」
「電波?」
「そう、君の能力は脳に流れる微弱な電流から相手の脳内を読み取る。ここはそれを妨害する電波が一切入らない空間だ。だからより君の能力を引き出せるはず」
全員が僕を見つめる。
そんなに期待されても困る。
脳内の相手の脳内を覗き見した経験は無い。
「で、出来るかは分からないけど、やってみるよ」
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