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人生最大のやらかし③
「……俺の顔、好き?」
じっと顔を覗き込まれ、あまりにも美しいその瞳にまたしても視線が釘付けになってしまった。
だけどなんとなく居心地の悪さを感じたから、今度は慌てて目をそらした。
「好きなんじゃないかな?大抵の、女の子は」
本当はめちゃくちゃドキドキしながらも一般的と思われる模範解答をすると、彼は何故か呆れたように笑った。
「そういう質問じゃ、無いっての。
まぁ、良いや。飲め、飲め、佐瀬!
飲んでやな事全部、忘れちまえ!」
そして言われるがまま、飲み続けた結果。
……僕は自力では歩けないぐらいぐでんぐでんに泥酔し、店のテーブルに突っ伏した。
***
窓から射し込む、明るい日の光で目を覚ました。
誰かに後ろから、抱き締められているような感触。
これまでも史織に新しい恋人が出来る度、自棄になり気が付けば見知らぬ女の子とベッドの上、なんて経験が実は何度かあった。
でもやたらと筋肉質なその肌触りに違和感を覚え、寝惚けながらその腕に触れた。
「おはよう、大晴。
……ちょっと、くすぐったいんだけど」
耳元でククッと、誰かが笑う気配。
一夜の過ちを後悔するほど、僕はもう綺麗でもなければ純粋でもない。
しかしその相手が、同性とか……嘘だろ!?
慌てて男の腕を振り払い、ガバッと跳ね起きる。
だが振り向いた先に居たのは、見知らぬ男なんかではなかった。
そう……昨夜僕に散々酒を飲ませ、潰した張本人、早乙女 遼河その人だったのだ。
「……へ?」
事態が全く飲み込めず、変な声が出た。
すると彼は半裸のまま蕩けそうなほど甘ったるい微笑みを浮かべ、当たり前みたいな顔をして僕にキスをした。
唇に早乙女くんの柔らかな唇が触れたまま、考える事数秒。
「……!!」
驚き、ドンと彼の体を突き飛ばすと、早乙女くんはニヤニヤと楽しそうに笑った。
「待って……状況が、マジで全く分かんない。
酔って僕、早乙女くんちに泊めて貰った……ってこと?」
お互い半裸なのは、この際スルーする。
それについて聞くのは、怖過ぎる。
……だって腰の痛みと、尻の違和感がスゴい。
様々な思いが駆け巡る中、早乙女くんは何故か再び僕の体をぎゅっと強く抱き締めて、不満そうにちょっぴり唇を尖らせた。
何だ?その表情。......可愛いな。
いやいや、落ち着け僕。
今は絶対に、そんな事を考えてる場合じゃないから!!
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