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欲情連鎖④

「そのつもり……だったんだけどねぇ。  大晴のそういう顔、スゲェ来る」  ゴムを着け、突き入れられた彼の小指の先。  それは意地悪な言葉とは異なり、イイトコロを探りながらも優しく僕の中を解していく。 「ん……っ!」  自然と漏れ出た、自分のモノとは思えないぐらい卑猥な喘ぎ声。  すると彼は楽しそうにクスリと笑い、また耳元で囁くように聞いた。 「ここも、良いんだ?  いっぱい気持ちいいとこがあって、ホントお得なカラダだな」  その言葉に反応し、強く締め付けてしまうのを感じた。  すると彼はそれを敏感に感じ取り、まるで実験をするみたいに指先を中でぐるりと回転させたり、焦らすみたいにゆっくり動かしたりして僕の反応をつぶさに観察した。  だけどその視線に、興奮している自分も確かに居て。  ……なんとも言えない、複雑な気持ちになった。  今は良いけれど、僕はいつか彼に飽きられ、捨てられる日が来るに違いない。  こんなにも気持ちいい男同士の行為を知ってしまった僕は、その時どうしたら良い?  まだ起きていない事をうじうじと考え、悩んでしまうのは僕の悪い癖だ。  それにこんな風に考えてしまっている時点で、既に僕はこの傲慢で性悪な男に惹かれ始めているという事なのかもしれない。  それどころかもしかしたら学生時代から、憧れなどという言葉で誤魔化していたが、それ以上の感情を彼に対して抱いてしまっていたのかもしれない。  そしてそのための感情の隠れ蓑が、史織への想いと執着だったのだとしたら……。 「何?大晴。考え事?  まだ余裕あるみたいだし、指増やすぞ」  足された、二本目の指。  突如増した圧迫感により、体内に燻っていた熱はさらに高められて。  ……僕は、考えるのを止めた。

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