46 / 132
愛だの、恋だの④
すると桂木くんはフフンと得意気に笑い、嬉しそうに答えた。
「若手の女子社員たちと、なんと……飲み会をする事になりましたぁぁぁあ!!」
さっきの日和さんとのやり取りもあるから、あまり行きたいとは思えない。
お酒は強い方ではないし、最近は反省しなければいけない事ばかり起こしているから、本気で禁酒しようかと思っていたところだったし。
「へぇ、そうなんだ?
良かったね、桂木くん。
僕の分まで、楽しんで来てね」
これでうまく、断れたと思ったのに。
桂木くんは僕の手首をグッと掴み、真剣な表情で言ったのだ。
「他人事みたいに、言うな!
お前も数に、入ってる。
……というか佐瀬は、絶対に連れてこいと言われてる」
その言葉に驚き、思わずブフォッと噴き出した。
「はぁ!?なんで勝手に、そんな事になってるんだよ!」
さすがにこれには、大きな声が出た。
「すまん、佐瀬!
だけどお前みたいな可愛いタイプが、最近の若い子にはウケが良いんだよ。
だから佐瀬抜きじゃ、この飲み会は成立せんのだ!」
そこまで言われて、鈍い僕でも気付いた。
これは間違いなく日和さんに、外堀から埋められ始めている。
ふたりではなく皆でと、社交辞令で答えたのを、逆手に取られた!
今までモテた経験がないから、突如訪れたらしきモテ期に困惑していると、桂木くんは両手の平を合わせ、拝むように頼んだ。
「ってことで、今週の金曜日は空けておくように。
いや……空けておいて、下さい。お願いします。
出逢いの少ない同期の野郎共を、助けると思って!」
心底どうでもいいと思ったけれど、僕は断るのが得意な方ではないから、しぶしぶではあったけれど結局その申し出を受け入れてしまった。
ともだちにシェアしよう!