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拘束プレイ①
「日和ちゃん……ねぇ。可愛い子じゃん」
にっこり微笑んで言われたけれど、目の奥が全く笑っていない。
だけどここで、怯んではいけない。
昨日から続くやり取りで、僕は珍しく彼に対して、優位な立場に立てていたのだから。
「まぁね。職場でも、人気あるみたいだよ」
少しつっけんどんな態度で答えたら、今度は彼の眉間に深いシワが寄った。
「てかさ……日和って、名字じゃなく名前だよな?
俺の事は、いくら言っても早乙女くんって呼ぶ癖に」
そんな事に、拗ねていたのか。
中々に、可愛い事を言う。
その理由につい吹き出しそうになったけれど、慌ててわざと険しい表情を作り直した。
「ねぇ、早乙女くん。
約束があるって言ってるのに、勝手に家の外で待つとか言われて、僕は怒ってるんだけど?」
彼の発言を聞き、ちょっぴり調子に乗って強気な態度に出た結果。
……彼は再び胡散臭いまでにキラッキラした笑みを浮かべ、告げた。
「うん。それに関しては、ごめんな。
でも、奇遇だなぁ。
……俺も今、めっちゃキレてるんだわ」
「……!?」
予想外の反応に、腰が引けた。
しかし腕をガシッと掴まれ、そのままズルズルと引き摺られるみたいにして。
……駐車場に停められていた、彼の車の助手席に押し込められた。
***
「明日は土曜だし、お前も休みだろ?
時間をかけて、たっぷり思い知らせてやるよ」
運転をしながら、クスクスと楽しそうに上機嫌で笑う早乙女くん。
あまりにも凶悪なその笑みを前に、自分が犯した失態にようやく気付いた。
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