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葛藤①

 ヤり過ぎて動けなくなってしまった僕のためにいそいそと昼食を作り、食べさせてくれるなんていう出血大サービス。  ……しかも、デザート付き。  遼河くんはどちらかというと俺様代表といったイメージだったけれど、意外と尽くすタイプなのだと以前聞いたあの言葉は、嘘ではなかったらしい。  僕自身もこれまで、どちらかというと尽くすタイプの人間だったように思う。  だって僕はいつだって史織の事を考えて、何を置いても史織の事を優先してきたから。  ……とはいえそれは彼女には友情としか思って貰えず、ホント大晴は良いヤツだよねなんて言葉で笑って済まされてしまったけれど。  だからこそ今のこの状況に戸惑い、困ってしまうのだろう。  なぜなら僕はこんな風に、誰かに本気で愛された事も、尽くされた事も無かったから。  でもそれが、不快だというワケではなく。  ……むず痒くて、くすぐったくて、どうしたらいいか分からなくなってしまっているという感じだ。  再会した時とは異なり、彼の気持ちが嬉しいと、今は素直に思えるようになった。  なのに一方的に無償の愛を捧げる事は出来ても、逆の立場になると途端に不安になってしまう。    この愛は、本物?  手に入らないから、意地になってるだけじゃない?  ……本当に僕も、彼を好きになっても良いの?  たぶん言葉にしたら、遼河くんはいつもみたいに傲慢に、当たり前だと言って笑い飛ばしてくれるに違いない。  それでも僕は自分に自信がなくて、弱くて臆病で。  おいそれとそんな甘い言葉を、素直に受け入れる事が出来そうにない。  ……なのに誰かから与えられる愛情に、どうしようもなく餓えている。

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