72 / 132
葛藤②
彼に好きだと言われるのは、嬉しい。
なのにその想いを受け入れて欲しいと言われたら、迷いが生じる。
カラダだけで満たされる関係なら、お互いもっと簡単で、楽なのに。
「ねぇ……遼河くん。なんで、僕なの?
君だったら他にもっとお似合いの、ふさわしい人もいるだろうに」
ヘラヘラと笑いながらそんな風に聞いてしまう辺り、本当に自分でも姑息だなと思う。
だって彼は真っ直ぐに、僕が良い、僕じゃなきゃ駄目だって答えてくれると、知っているのに。
だけど彼はククッと笑い、予想外の言葉を返してきた。
「はぁ?なんだよ、それ。
他って、意味が分かんねぇんだけど。
じゃあ逆に、聞くけど。……君下の代わりになれる人間って、他にいると思う?
あとは、知之の代わりとか」
史織や、知之代わり……?そんなの、いるはずがない。
だって史織は史織だし、知之は知之だから。
戸惑う僕の頭を優しくポンポンと撫で、彼は続けた。
「つまり、そういう事。
大晴の代わりになれる人間なんて、他にいないよ」
当たり前みたいに言われた言葉に、目頭が熱くなる。
だけどそんな僕の感情の変化に気付かないのか、遼河くんは拗ねたようにじとりと僕を軽く睨み付け、両頬に手を伸ばして来たかと思うと、むにっと左右に引っ張った
「それと俺にふさわしい人間って、何だよ?
……それを決めて良いのは、俺だけじゃね?」
頬っぺたを最大値まで伸ばされた、状態のまま。
……彼は僕の唇に、噛み付くみたいに荒々しくキスをした。
ともだちにシェアしよう!