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昔から背も高くて明るく、クラスでも人気者だった祥太郎とはもうずいぶんと長い付き合いになる。
小学校から共に野球を始め、リトル、シニアとバッテリーを組んだ。辛い事も、楽しい事もなんでも一緒。
祥太郎がそばに居てくれれば自分は何もいらない。
初めて身体の関係を持ったのは高校生の時だった。全寮制の男子校で同じ部屋。
若気の至りと言えばそれまでだが、軽い気持ちで一線を越えてから未だにズルズルとその関係が続いている。
何度も関係を解消するチャンスはあったのに、一緒にいると楽しくてプロ野球の世界に入っても、彼が結婚を決めたその時も。彼が関係を拒まないことをいいことにずっと、現実から目を背けて来たのだ。
だけどもう、潮時なのかもしれない。目の前が一気に暗くなる。
「僕の方こそごめん。今まで、ありがとう」
色々と言いたい事は沢山あった。けれど、そのどれもが声にならなくて壮馬は強く唇を噛みしめた。
祥太郎は意外にもあっさりと解決して驚いたような、何処かホッと安堵したかのような複雑な顔をしてこちらを見ている。
なんでそんな顔をするんだと文句の一つでも言ってやりたかったが、胸が締め付けられるように苦しくて、このまま彼の側に居たら泣き出してしまいそうで、言葉にならない感情をぐっと飲み込んで俯くしかできなかった。
丁度その時、彼の携帯が鳴った。ポケットから取り出し相手の表示を見て、祥太郎は決まりの悪そうな顔をする。
その顔が全てだと物語っているようで、精いっぱいの笑顔を作って見せた。
「出てあげなよ。奥さんからだろ? 僕、もう帰るから」
「壮!」
「……っ」
祥太郎はまだ何か言いたそうな素振りを見せていたが、壮馬は無視して歩き始めた。
明るい所から急に暗い場所へ頬り出されたような心細さを感じながら、とぼとぼと帰った。
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