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秘密の自主練 6
「やぁ、リチャード。会いたかった!」
球場の入り口に到着するなり、派手なスポーツカーから颯爽と降りて来た長身の白人男性がリチャードに抱き着いて来た。
呆気に取られて固まっている壮馬の目の前で熱い抱擁を交わし、流れるような動きで手の平にキスを落とす男を見て「成程、これが噂のアメリカンスタイルか」なんてずれた思考が頭を過る。
「……久しぶりだな、マイケル。まずは少し落ち着け。ソウマが固まっている」
「え? ……おっと、これは失礼。あまりにも再会が嬉しかったからついね。君がリチャードの教え子かい? 会えて嬉しいよ」
少し外に跳ね気味のクセのある金髪。茶色がかった意志の強そうな瞳、きりっとした眉。顔立ちは中性的だが、がっしりした身体が男性らしさを感じさせている。
白いTシャツに赤いパーカー、ダメージジーンズを着たラフなスタイル。シンプルな格好だが、素材が良い分とてもよく似合っていてモデルか芸能人と言っても納得がいく。
「初めまして。一ノ瀬壮馬です」
「俺はブルーシューズ所属のマイケル・ミラーだ。よろしく、ミスター・ソウマ」
差し出された手を握り返すとほんの一瞬、物凄い力で握られ壮馬の背筋がピンと伸びる。
爽やかな笑顔を張り付かせたまま、上から下まで舐めるような視線で壮馬をじっくりと観察して来るミラーの笑顔に妙な違和感を覚えて、壮馬は思わず一歩後ずさった。
「……へぇ、かなりのベビーフェイスだね。リチャードのお気入りにしては幼過ぎるような気もするけど……」
「!?」
スッと目が細められ彼の表情から笑顔が消える。早口の英語ぼそぼそと何事かを呟いたマイケルは直ぐに手を離すと、また直ぐに笑顔を作ってリチャードへと向き直った。
「随分と可愛い弟子じゃないか」
何事も無かったかのようにリチャードと話す彼に強烈な違和感と不安を感じる。
なんと言っていたのかはよくわからなかったけれど、あまり歓迎されていないと言う事だけは何となく理解出来た。
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