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03-20.
「……二つ用意されているな」
一つしかない場合、ジェイドを放置して使ってしまおうかという考えが頭を過っていたのだが、それは実行しなくてもよさそうである。
……念には念を入れた方が良いだろう。
常時持ち歩いている杖で寝具を突く。
不審な魔力もなく、何かが隠されているような様子もない。寝具の下も覗いたが、特別な仕掛けはなにもないようだ。
……副団長と言っていたな。
視線をジェイドに戻す。
完全に油断をしている様子を見る限りでは、騎士としての実力は期待できそうもない。万が一、誘拐犯などからの襲撃を受けた場合、レオナルドは自分自身とジェイドを守り抜かなければならなくなるだろう。
そこまで想定をして、レオナルドは杖に魔力を込める。
……範囲は宿全体でいいか。
魔力感知ができないように何重にも魔方陣を重ねていく。それらを部屋中に展開し、万が一、悪意を持った襲撃にあった場合に備えていく。
「こんなものか」
小規模の魔方陣を何重にも組み合わせるのは久しぶりである。
時々、伯爵領内に限り外出を許されていた時には、防衛拠点の強化のために魔法使っていたが、個人的なものは十数年ぶりだろう。
「……魔法……?」
魔力の気配を感じ取ったのだろうか。
ジェイドは顔を上げた。
頬や耳は赤くなったままであり、目はぼんやりとしている。そのまま、鈍い動きをしていたものの、少しは酔いが醒めたのかもしれない。
「警戒をしただけだ」
レオナルドは寝具から離れる。
「それよりも酔っぱらいは寝た方が良い」
先ほどまで座っていた椅子に座り直した。
レオナルドは残っている赤ワインを口にする。宿で準備することができる最高品質のものを用意させたと言っていただけのことがあり、レオナルドは久しぶりに好みの味に出会ったことに感謝をしていた。
「酔っぱらってなんかねえしー」
ジェイドは机の上に上半身を倒れこむ。
……酔っぱらいは誰でも同じだな。アルと同じことを言っている。
それに対してレオナルドは冷めた目を向けていた。
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