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03-5.

「ジェームズ」  ジェイドは視線を向けることもせずに声をかける。 「丁寧に扱えよ」  詳しいことは言わない。  そもそも、深い意味などないのかもしれない。 「お任せくださいませ」  それに対してジェームズはいつも通りに応えるだけだった。 * * *  風呂場では丁寧に洗われた。  ……散々な目に遭った……。  今日のことは忘れたくても忘れられないだろう。  三歳の頃から世話をしてくれているジェームズの指示に従い、メイドたちの手によって身体の隅々まで洗われた。  丁寧に扱えと言っていた意味を理解した時には逃げ出す場所などなかった。 「坊ちゃま」  髪を乾かされているレオナルドの横に立つジェームズの表情がいつもと違う。  緊張をしているのだろうか。 「お渡しをいたしました教科書には目を通されましたでしょうか?」  ジェームズの言葉ですべてを理解した。  ……そういうことか。  出会った頃ならば吐き気を抑えるので必死になったことだろう。  一泊したデートをしたことにより、ジェイドに対して少なからず好意を抱き始めていることを自覚した今となっては変な意識をしてしまう。 「……信じるからな。ジェームズ」  結婚をするのならば避けては通れない道であると渡された教科書は読んだ。  とはいえ、性欲に関することにほとんど触れてこなかったレオナルドにとっては目を疑うような内容が書かれた教科書を読んだのは一度だけだ。しかも、具体的な方法の一部は相手に従うようにと書かれて締めくくられていた。 「ご安心ください。経験者より集めた内容でございます」  ジェームズは実子よりも共に過ごす時間がないと自負しているレオナルドの為ならば、恥など考えなかったのだろう。  曖昧な言葉ばかりが書かれている指南書では役に立たないと判断し、ジェームズは体験談を聞き漁り、その成果を教科書として一冊にまとめてレオナルドに渡したのだ。  ……そこまでしてくれていたのか。  それを知ったのはこの日が初めてだった。

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