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03-4.

「風呂入るか?」  ジェイドに問いかけられ、レオナルドは何度か瞬きをした。  ……真顔でなにを言っているんだ。  唐突な質問だったのもあるだろう。  一瞬、汗臭いのかと心配をしてしまったが、汗をかくようなことは何もしていない。  ……でも、馬車で疲れたな。  最高品質の馬車が用意されていたとはいえ、一時間半も乗っていれば疲れる。  日頃から馬車に乗り慣れていないレオナルドの身体を風呂に使ってゆっくりと休むのも大切なことだろう。  ジェイドはそれを提案しているのだろうと、レオナルドは考えた。 「そうする」  導き出した答えを聞き、ジェイドは頷いた。  それからレオナルドの腰に手を回したまま、歩き出す。背後からジェームズたちが着いてくることを気にしていないのだろう。 「部屋の案内はジェームズにしてもらえよ」 「わかった」 「俺は先に部屋にいるからな」  ジェイドの機嫌は良くなったのだろうか。 「綺麗にしてもらえよ?」  ジェイドは緩んだ顔で言った。  その言葉に対してレオナルドは眉を潜めた。 「毎日、風呂には入っているんだが」 「知ってる」 「香水も付けていない。臭いなんかしないだろ?」  香水を好まないとはいえ、体臭がする年齢でもない。  貴族や庶民の間で流行をしている煙草も好んでいない為、臭いもついていないだろう。 「良い匂いはするけどな」  ジェイドの言葉を聞き、安心をする。  ……疲れを癒す為の提案だったのか。  女性が好むような香りが豊かな薔薇風呂でも用意されているのかもしれない。  ……部屋は一緒だよな。  侯爵家が所有している邸宅で共に暮らすことを決めたのだ。  初日から別々の部屋で眠るとは思えない。

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