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03-3.
「ダメだ」
ジェイドはレオナルドの腰に腕を回す。
「その女を解雇しろ」
冗談ではなく、本気で言っている。
それはメイドにも伝わったのだろう。
怯えたような表情を向け、必死に頭を下げている。謝罪の言葉を口にしようとするのだが、向けられている冷たい視線に恐怖心を抱き、声がでない。
「ジェイド。解雇はしなくてもいいんじゃないか?」
レオナルドは呆れたように声を上げた。
女性扱いを受けたのは屈辱的だった。同性同士の結婚をすることになったとはいえ、レオナルドは男性である誇りまで捨てたわけではない。
「庇うのか?」
「違う。それでも、言い間違いで解雇するのはかわいそうだろ」
「同情する価値なんかないだろ」
ジェイドは機嫌悪そうな顔をする。
事前にレオナルドを女性扱いするようなことがないように徹底させていたのだろう。それでも一部の使用人は新しいやり方を採用するジェイドには従えないというかのように反発をする。
「今回だけは大目に見てやる。次は解雇だけで済むと思うな」
ジェイドはレオナルドの言葉を聞き入れた。
その分、同じようなことをした時には罰が重くなっている。
……妥協してくれたのか。
伯爵邸ではありえないことだった。
レオナルドの提案を聞き入れられた時などほとんどない。
「レオナルドの世話役はジェームズが続けろ」
「かしこまりました。お任せくださいませ」
ジェームズは深々と礼をする。
それから慣れた足取りでレオナルドの傍に立つ。数歩下がったところで姿勢よく立っているのは伯爵邸でも見慣れた光景だった。
「他はハロイドが決めろ」
「はい。かしこまりました。選び直す時間をいただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「構わない。決まったら報告しろ」
ジェイドはレオナルドに視線を向ける。
使用人たちに向けていた冷たい顔とは違う。
愛おしい存在を怖がらせていないか、不安になっている顔だった。
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