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03-2.

 ……変な奴。  強引に物事を進めようとするところはあるが、それ以外は穏やかな性格をしているのかもしれない。レオナルドはそんな見当違いなことを思っていた。 「おかえりなさいませ」  玄関に足を踏み入れた途端、侯爵家の使用人たちが並んでいた。  声を揃えて出迎えの言葉をかけた使用人の中には、伯爵家から侯爵家に転職をしたジェームズの姿もある。 「夕食はいかがなさいますか?」 「馬車の中で済ませた」  執事の言葉に対し、ジェイドは素っ気なく言った。  それに対して執事は軽く頭を下げ、近くにいたメイドに目で合図をする。素早く動き出したメイドは厨房に夕食の中止を伝えに行ったのだろう。 「それでは奥方様はこちらへどうぞ」  メイドに声をかけられ、レオナルドは眉を潜める。  ……女に見えるのか?  目が見えないわけではないだろう。  真っすぐに向けられている瞳の中にはレオナルドの姿が映っている。  ……女扱いをするように言い付けたのか?  それならば侮辱されていると怒っても問題はないだろう。  しかし、ジェイドがどのような指示を出したのか、わからない為、困惑した表情のままジェイドに視線を向けた。 「は?」  ジェイドの表情は冷たいものだった。  先ほどまで緩んだ笑顔を浮かべていた人物と同一人物とは思えない。 「ハロイド。メイドの教育が行き届いていないんだが」  ジェイドは先ほど夕食を確認した執事、ハロイドを呼びつける。 「申し訳ございません。ジェイド様。レオナルド様」  それに対してハロイドは表情一つ変えることなく言い切った。  言葉足らずではあるが、ジェイドの言いたいことを理解したのだろう。ハロイドはレオナルドを女性扱いして誘導しようとしたメイドに視線を向けた。 「レオナルド様の担当を外させていただきます。再度、ジェイド様の配偶者となられるレオナルド様の尊厳を踏み弄るような発言をしないように教育をする慈悲をお与えください」  与えられた台詞を口にしているように聞こえるのはなぜだろうか。  感情の籠っていない振る舞いをすることが正しいのだと訴える目をしているハロイドに対し、ジェイドは機嫌悪そうに舌打ちをした。

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