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第一章 出会い

 空を飛ぶ夢を見た。  空を飛ぶ夢を見るのは、これが初めてではない。  そして夢の中で、これは夢だ、と認識することも珍しくはない。  竜造寺 貴士(りゅうぞうじ たかし)は、そう考えて、ただ空中滑空を楽しんだ。  いつもなら、街中を飛ぶ夢なのだが、今回は勝手が違っていた。  眼下には、真っ白な雪原。  どこまでも続く、一面の雪景色。  そこに落ちる自分の影を追いながら、貴士は飛んだ。 「ん?」  ふと見ると、その雪原にうずくまっている人影がある。  どうしようか。  手を差し伸べるか、そのまま捨ておくか。  貴士は、その選択のできる権力と財力を持っていた。  この国で屈指の大企業、竜造寺グループ。  その会社の一つを、貴士も任されている。  指一本動かすだけで人の運命を変えられるだけの地位を、持っていた。  気まぐれで、貴士は低く降りてみた。  凍えて、両手を息で温めているのは、まだ10代の少年だった。  雪のように白い、肌。  美しい少年だった。 「どうした?」 「僕は……」  残念ながら、そこで目が覚めた。

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