1 / 90
第一章 出会い
空を飛ぶ夢を見た。
空を飛ぶ夢を見るのは、これが初めてではない。
そして夢の中で、これは夢だ、と認識することも珍しくはない。
竜造寺 貴士(りゅうぞうじ たかし)は、そう考えて、ただ空中滑空を楽しんだ。
いつもなら、街中を飛ぶ夢なのだが、今回は勝手が違っていた。
眼下には、真っ白な雪原。
どこまでも続く、一面の雪景色。
そこに落ちる自分の影を追いながら、貴士は飛んだ。
「ん?」
ふと見ると、その雪原にうずくまっている人影がある。
どうしようか。
手を差し伸べるか、そのまま捨ておくか。
貴士は、その選択のできる権力と財力を持っていた。
この国で屈指の大企業、竜造寺グループ。
その会社の一つを、貴士も任されている。
指一本動かすだけで人の運命を変えられるだけの地位を、持っていた。
気まぐれで、貴士は低く降りてみた。
凍えて、両手を息で温めているのは、まだ10代の少年だった。
雪のように白い、肌。
美しい少年だった。
「どうした?」
「僕は……」
残念ながら、そこで目が覚めた。
ともだちにシェアしよう!