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第4話
肌寒い部屋にブラインドからの日差しが眩しい。目を覚ました紘巳は横に置かれた時計を見ると髪をかき上げた。
すっと横で眠っている典登の顔が視線に入って寝ぼけ顔が自然に笑顔に変わり、無意識に愛しいキスを落した。床には昨日の行為を思い出させるように散らばった服。
ベッドから降りるとゆっくり集めた服を羽織りながらキッチンへと歩いた。
『あーそっか……昨日あのまま』
出したままの食材、まな板、包丁。キッチンで昨日の残骸が"おはよう"とお出迎えだ。
抜いた晩ご飯のせいか朝から空腹を感じて適当に目に入ったフルーツを摘んで口に入れた。
テーブルに置かれたスマホに取ってモグモグさせながら操作するとメッセージと着信を確認する。
『……羽山 さん』
昨夜の着信履歴に並んだ名前。しばらく見なかった二文字に手を止めた。口の中を空っぽにすると通話ボタンを押した。
「……もしもし?」
『ご無沙汰しております。紘巳です』
隣の部屋から微かに誰かの話し声が聴こえるような気がして布団から顔を出した典登。
隣に居るはずの紘巳の姿はなく、寝ぼけ眼 で鈍い錘 をつけた様な身体を起こすとよろよろと声のする方へ吸い寄せられた。
『わかりました。では明日』
通話終了ボタンを押す。"フゥ"と溜め息のよう声を漏らしてゴムでキュッと髪の毛を束ねた。
「誰と電話?」
下着姿の典登がドアに寄り掛かったまま紘巳の背中に言った。
『あっ、起こしたか?……なぁ何か着ろよ、風邪引くぞ』
「脱がした張本人がそれ言う?」
冷蔵庫からペットボトルを出して顔色変えず典登に近付いていく。
「ふふっ。ごめん、冗談!服が見当たらなくて。それと……誰かさんのせいで身体中痛い」
『とりあえず水でも飲めよ』
渡されたペットボトルの冷たさを掌に感じながら言われたままグイッと体内に染み込ませた。
「どうして髪の毛束ねてんの?」
紘巳がそうする時は自身を奮いたたせる時と決まっている。仕事の時もスイッチを切り替える為に髪の毛を束ねる。
今はどうして?電話と関係があるのか?
頭の中の疑問をそのまま紘巳にぶつけた。
『典登。明日仕入れに行ってくる』
「あーうん。じゃお店には夕方くらいに?」
『いや明日は行かない。羽山さんの所に行ってくる』
「えっ、それって……」
『26番ルームの再開する』
そう言った紘巳の眼差しに胸が熱くなった。この眼をした時の紘巳は止められない。髪を束ねた意味をここで理解した。
「そっか。またやるんだね」
『何も心配いらない。典登……キスしていいか?』
「うん。……欲しい」
昨夜とは違う甘ったるい柔らかいキス。
安心させるように時々唇を離して顔を見ながら心を通わせて"大丈夫だよ"と優しく諭すように。
愛しい人の温かい体温を感じる。それだけで不安はどこかへ消え去る、愛とはそうゆうものだと。
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