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ミツヤに好きって言われた。初めて好きになって、初めて告白したって言われた。「え? ほんとに? 好きって僕のことが?」なんて疑ってしまったのは当然だ。
だって、中学のときから取っ替え引っ替えのミツヤが僕を好きだなんて、何かの間違いだって普通は思うじゃん。でも本気だってミツヤの目が言ってる。それになんかすごいことまで言われてしまった。
(孕むくらい中出しって、変態じゃん)
そんなの、変態以外の何者でもない。
(そもそもナマでしたことなんてないくせに)
初めてシたときからミツヤは絶対にゴムを使った。それがマナーだって言ってたけど、本当はちょっとだけナマでしてみたいって思ったこともあった。
(男だし、ナマでも平気だって何度も言ったのに)
それでもシなかったのはミツヤのほうだ。聞いたときは残念だったけど、僕が言うたびに「セーフティーセックスだって言ってんだろ」って言ってくれるのが嬉しかったのも本当だ。
ミツヤと別れたあと付き合った人の中にはナマでしたがる人もいた。でも、僕は絶対に嫌だって断り続けた。それが原因で別れた奴もいる。
(だって、ナマでシたいと思ったのはミツヤだけだし)
もう二度とミツヤとスることはないってわかっていたのに、それでも生はミツヤとだけだってずっと思ってた。
そんなミツヤが、仰向けに寝転がった僕のお腹に何も付けてないナニを擦りつけている。
「ミツ、ゴムは」
「ほんとはお互いのためにもゴムしたほうがいいんだけど。今日は最初から最後まで生でしてぇ」
そんなこと言われたら嬉しくて涙が出てきた。慌ててお風呂に入り直したときにめちゃくちゃたくさん洗った後ろもヒクヒクしてる。
「超きれいに洗ったから、大丈夫だし」
そう言ったら、なぜかミツヤがブハァッて吹き出した。え、ちょっと、なんで笑うんだよ。
「いや、ほんとアキはマジメちゃんだよなって。あー、ほらむくれんなって」
チュッてキスされて顔が熱くなる。キスなんて死ぬほどしてたはずなのに、何だか初めてのときみたいな気分になってきた。
だってさ、二年以上振りにミツヤに抱かれるんだよ? それもお互いに好きだって確認してからなんて……やばい、緊張してきた。
「さぁて、どんなんなってるかな」
そんなおっさん臭いことを言いながら、ミツヤが体のあちこちを触り始めた。
首を舐めたりチクッとキスしたり、そうかと思えば乳首をピンピン弾かれてビクビクなったり、おへそをピチャピチャ舐められてゾクゾクしたり。久しぶりの感覚に体がビクビクしっぱなしになる。
(あー、いま絶対にとろんとした目になってる……)
そんなことを思っていたら、ジェルをつけた指で後ろを撫でられた。思わずいつもみたいにギュッと目を閉じてしまう。そんな僕の様子にミツヤはすぐに気がついた。
「アキ?」
「あ、うん、大丈夫」
しまった。相手はミツヤなのに、癖でつい体に力が入ってしまった。
僕がこれまで付き合ってきたのは、大体が後ろにはちょっと触るだけですぐに突っ込む人ばかりだ。中には触るのを嫌がる奴もいた。触られても痛いことが多かったせいで体が勝手に身構えてしまう。
たまたま付き合った男がそういう奴ばかりだったのか、そもそも男相手だとそういう奴が多いのかはわからない。少なくとも僕が付き合った相手はそんな人ばかりだった。
(いくらネコ専だからって、即突っ込むとかムリだっての)
ほぐさないで勃起したナニを突っ込むとか、どういうことだよって何度も思った。だから、いつも洗うついでに自分でほぐすようにしていた。ミツヤとスるときは一度もしたことなかったのになぁなんて思ったりもしたっけ。
(そういやミツヤって、いつもほぐすの長かったよな)
あれは前戯ってやつだったのかなぁ。乳首もナニもたくさん触るし、後ろなんて恥ずかしくなるくらいいじられまくった。
そう、いまだってシワを伸ばすみたいに何度も撫でて、ムズムズし始めてようやく指を入れてくれる。それも優しく丁寧にって感じだ。
「……ほぐされ慣れてねぇ感じだな。それに……やっぱり。前立腺のあたりも元に戻ってる。あんだけほぐして慣らしてふわとろにしてたってのに、元の木阿弥じゃねぇかよ」
「チッ」て舌打ちが聞こえた。え? なに? どういうこと? 僕のお尻が変になってるってこと?
「ミツ?」
「あぁ、大丈夫だ。俺がまたイチからトロトロにしてやる。ったく、俺が丹念に育てて丁寧に仕込んで最高の体にしたってのになぁ?」
「あの、ミツ」
「気にすんな、お前のせいじゃねぇから。過去の男たちが下手クソだったってだけだ。いや、違うな。アキへの愛情が俺ほどはなかったってことだな」
「へ? なに言って、んひゃっ!?」
「いいからおとなしくされてろ。俺がまた前みたいにココだけでトロットロに感じるくらいにしてやるから。あー、違うな、それ以上だな。うん、いっそ俺を見るだけでココが疼いてたまんねぇって体にするか。そのうちココ、濡れるようになるかもしれねぇな」
「は? ミツ、ちょ、……っ!」
とんでもないことを言い出したミツヤを見ようと頭を少し上げたときだった。お尻の少し奥まったところをグッと指で押されてカクッと力が抜けた。ミツヤに言われたとおり立てていた膝がズルッとシーツの上を滑る。
「前立腺はまだ感じるみたいだな」
「ミツぅ」
「相変わらず指でいじられんの好きだな。……思ったより中がトロけるのは早ぇし、前立腺だってこんなにわかりやすくぷっくりなるのに、何でいじらないかなぁ」
「や、ミツ、そんないじったら、ん……っ」
「こら、逃げんなって。こうやって揉まれるの好きだろ? おぉ、すげぇ先走り垂れてきたぞ」
「だって、ミツが触ってるから、あ……ぁ!」
「あっぶねぇな、思わずイかせちまうとこだったじゃねぇか」
「やだぁ! も、指やだって、ばぁ!」
「お前、早すぎんだろ」
「だってぇ!」
そんなの、ミツヤが触ってるからに決まってんじゃん。ずっとずっとミツヤに触ってほしいって思ってたせいで体が勝手に敏感になってるんだってば。
「ダメ、って! もうそこ触んないで、それイッちゃうからぁ!」
「……あーぁ、やっぱ出ちまうか。チッ、ほんとろくでもねぇ男ばっかだったんだな」
(そんなこと言われても、前立腺グイグイされたら出ちゃうんだって)
久しぶりにお尻で感じながら出したからか、勃起したままのナニがジンジンした。お尻もキュンキュンして、早くもっと太いのがほしいって言ってるみたいだ。
「入れるから、後ろ向けって」
「やだ、前からがいい」
「苦しいだろ? それに最初は後ろのほうが」
「やだ! 前がいい!」
だって久しぶりにミツヤとするんだから、ちゃんとミツヤに抱かれてるんだって感じたい。ミツヤのイケメン顔を見ながら……は無理だとしても、ギュッと抱きしめながらシたい。
そんなことを思いながらミツヤの顔を見たら、胸をズッキュンって射貫かれた。ちょっと待って、ミツヤってこんなにかっこよかったっけ。
「ミツ、超かっこいい」
「はぁ? お前どんなタイミングだよ」
「だってかっこいいんだもん」
昔からずっと思ってたけど、やっぱりミツヤはかっこいい。染めた茶髪はサラサラできれいだし、両耳のピアスもすごく似合ってる。お風呂に入ったから香水の匂いはしないけど、ミツヤの体臭だって僕は大好きだ。
「ミツ、好き」
「はいはい、まだ酔っ払ってんのかよ。ま、出るってことは大丈夫だろうけど。いや、お前は出なくてもいいか。どうせ、これからナカイキ思い出させるわけだし」
「なかいき?」
「これならすぐ思い出すだろ。さぁて、思い切り気持ちよくなろうな? それに、すっかり昔みたいに『ミツ』って呼んでるしな」
うん? なんの話? だって僕はずっと「ミツ」って呼んでるじゃん?
(あれ? 違ったっけ?)
ミツって呼んでたのは卒業までで、卒業してからはミツヤって呼ぶようになった。だって「ミツ」って呼ぶと切なくなるんだ。だからミツヤって呼んでたはずなのに……あれ?
「はいはい、この酔っ払いが。そのまま俺においしくいただかれてろ」
「ミツ?」
「好きだよ、アキ」
「うん、僕もミツが好き」
なんだかよくわかんなくなってきたけど、僕がミツヤを好きなのは本当だ。それにミツヤも僕を好きだって言ってくれる。じゃあ、何でもいいや。
「ミツ、大好き」
もう一度そう言ったら、にっこり笑ったミツヤが僕の好きなベロチュウをしてくれた。それから、僕はわけがわからなくなるほど抱かれまくった。
「も、やだぁ!」
「夜はこれから、だろ……っ」
「ひゃぅ! や、も、出な、からぁ……!」
「大丈夫、アキは最初からほとんど出てねぇ、よっ」
またお尻の奥をガツンと突かれてお腹が震えた。こんなに何度も突っ込まれるのは久しぶりで、感じすぎてどうなってるのか段々わからなくなってくる。
そもそもこんな深いところに突っ込まれたのは久しぶりなんだ。それなのにミツヤのでかいナニは容赦なくそこを突っついた。
「せっかく前立腺も結腸の入り口も慣らしまくったのになぁ」
「も、くるし、ってば……!」
元カレのときに何度も「されたい」って思ってたはずの行為なのに、いざされると苦しくてたまらない。息ができなくなるくらい苦しいのに、あの頃ミツヤに教え込まれた強烈な感覚が一気に蘇って僕の体は大喜びでミツヤを迎え入れるんだ。
「イきすぎて、苦し、だって、ば!」
「そりゃけっこう。あれだけ丁寧に快感を得られるようにしてたのに、元に戻りやがって。俺が一回イく間に三回イケるまで、また戻そうな、っと」
「あぁん!」
また変なことを言われた。よくわからないけど、ミツヤは僕の体が最初の頃に戻ったのが許せないらしい。そのくせ「処女に戻ったみたいで楽しいけど」なんてことも言った。しかも、ものすごくエロい顔で言うんだ。
「も、やだってばぁ! 奥は、ムリだって、言ってるぅ」
「はいはい。もうちょっとで奥柔らかくなるからな」
「やだぁ! も、おく、しな、でって、言って、のにぃ」
「あー、涙と鼻水でぐっちょぐちょだな。……あ、やべぇ、またビンビンになったわ」
「ひぃっ! も、やめて、おく、でかいの、つっこまない、でぇ!」
「大丈夫。先っぽもう入ってるし」
「ひ……! あ、あ! ひ、ぐ……!」
体がギシッと固まった気がした。これ、知ってるやつだ。ミツヤと毎週末シてたときもこんなふうだった。こうなると僕のナニからは何も出なくなる。それなのに目がチカチカして頭がバカになるくらい気持ちがいいんだ。頭も体もナニもお尻も、全部がバカになって気持ちいいことしかわからなくなる。
「ミツぅ……!」
「アキ、好きだ。もう絶対に離したりしねぇ。もし逃げようなんて思ったら――……」
ミツヤが何か耳元で言ってるけど、バカになった頭じゃ理解できない。はくはく必死に息をしているのに、それを邪魔するみたいにキスまでされた。それから、もっと奥に押しつけるようにミツヤが腰をぐいぐい動かす。
(僕、もう死んでもいいかも)
全身ガクガク震わせながらそんなことを思った。もしこれが夢なら、このまま死んでもいいって本気で思ったんだ。
・ ・
「ねぇミツ、ほんとに泊まりに行っても大丈夫なの?」
「なんだよ、あんなに泊まるんだって喜んでたのアキだろ?」
「そうだけどさ。でも、ミツのお姉さんもいるし」
「大丈夫、姉貴は彼氏んとこだってさ」
「え? あれ、でもこの前も彼氏の家って言ってなかったっけ?」
「そ。姉貴は彼氏んとこで半同棲してんの。って言っても、最近始めたばっかだけどな」
「そうなんだ」
ミツヤのお姉さんには高校のときに何度か会ったことがあるけど、すごい美人さんだ。初対面のとき、ちょっとだけドキドキしてしまったのを覚えてる。
(だって、顔がミツヤに似てたからさ)
あれだけ美人なら彼氏の一人や二人いてもおかしくないと思ってたけど、そっか、彼氏と同棲してるんだ。
(同棲かぁ)
いいなぁなんて、つい思ってしまった。もしミツヤと同棲できたらなぁなんて、ぼんやり想像する。
「おまえ、いま姉貴が羨ましいとか思っただろ」
「は!? な、なに言ってんだよ。そんなこと全然思ってないし」
「はいはい、同棲っていいよなー。それこそやりたい放題だしな」
「はぁ!? そんなこと全然思ってないし!」
「なに赤くなってんだよ。つーか、姉貴で想像してんじゃねぇだろうな?」
「んなことするわけない! ミツとするの想像したんだって! ……あ」
「アキはエロいなぁ?」
ニヤニヤ笑うな! だって、同棲とか誰だって憧れるじゃん!? それにやっと両思いになれたんだし、そういうこと想像して何が悪いんだよ!
(それに、最近また体が変になってきたし)
前みたいに体が疼くようになった。っていうか、前よりひどくなった気がする。
(だって、ミツの背中見るだけで抱きつきたくなるとか相当じゃんか)
電話で声を聞くだけで後ろがヒクヒクするようにもなった。僕がこんなふうになったのはミツヤのせいだ。
「全部、ミツのせいじゃん」
「はいはい、ぜーんぶ俺のせいだよ。アキがエロいのも、アキの体が疼くのも、アキがヤリまくりたいのも、ぜーんぶ俺のせいです」
「……っ! ば、馬鹿ミツ!」
二度目のお泊まりのこの日、僕は前よりもっと大変な目に遭うことになった。それなのに、その後「泊まる?」なんて聞かれたら「うん」しか言えない。夜通しアレコレされるってわかっているのにだ。
(こんなの高校のときと同じじゃん)
そう思ったけど、あのときとは違うミツヤの顔を見るたびに僕はときめきまくっている。
そうして大学四年になる春、ミツヤのお姉さんが彼氏と結婚するからと部屋を出て行った。入れ替わるように僕は部屋に入り浸るようになり、念願の同棲っぽいことを始めることができた。
そうして大学卒業と共に僕の新居にもなるんだけど、それがわかるのは卒業間近になってからだった。
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