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ゲームばっか見てんじゃねぇ

ハロー、いかがお過ごしだろうか。 俺は絶賛、放置プレイをかまされている。 事の始まりはそう、新作ゲームの発売だ。 以前から開発者の制作予告に盛り上がっていた世間同様、俺の彼氏、ハジメもそわそわと発売を心待ちにしていた。 それはいいさ。楽しみなんていくつあっても足りないくらいだからな。 だが予想外だったのは、寝る間も惜しんでゲームに没頭してしまう事だった。 元からゲームが好きな奴ではあったが、ここまで熱中してしまうとは。 最後に目が合ったのは発売日前日の夜。 明日が楽しみでそわそわ寝付けない様子を見かねて、サクッと抜いてやろうか?と誘った俺に、ハジメは「体力温存しておかないと」と言って背を向けて眠ってしまった。 それ以来、起きたら隣には居らず、朝の挨拶にも「ん」と一言。 飯は?と聞いても「んー」とまともな返事が返ってこず、先に食って様子を見ているとガサゴゾ取り出したのはカロリーバー。 なんて用意の良い奴…!と感心出来たのは初日だけで、風呂も済ませて先に寝るぞと声をかけた次の日の朝、ベッドの隣のスペースは冷えきったまま。 嫌な予感がしてリビングを覗けば、昨日の夜と変わらない猫背がそこにいた。 まじかよ、寝ずに一晩中ゲームしてたのか…? 信じられない気持ちで背後から近寄れば、ガチャガチャという激しいコントローラーの音と散らばるカロリーバーの残骸。 「(なんかちょっと…こえぇ…)」 ここまで来ればいっそいつ限界が来るのか見たくなって、その日は一度も声を掛けずに自分の休日を過ごした。 そして今日、また隣がひんやりとして目が覚めて、しばらくぼーっとした後自分の口がムッと突き出していることに気がついた。 「なんつーか…」 ぼそっと出た声は不満げで、思っているよりも弱々しくその後の言葉は飲み込んだ。 かけていた布団をぐるぐると体で巻き込んで、ごろごろ暴れて、俺と、隣の熱の境界線が曖昧になった頃に起き出した。 すぐに起きなかったせいで少し体がだるく、朝飯何にしようかなと考えながら開いた扉の先で、見つけたのは、ハジメが倒れている姿。 「は…?おい」 体のだるさなんて一気に忘れて、寝起きで温かかった手足の先がどんどん冷えていく。 まじ?人ってこんな呆気なく死ぬの? 救急車?間に合うのか?原因は?番号何だっけ、何て言やいいんだ? ぐるぐる嫌な想像が浮かんでは消え、見たくない自分と見なくてはいけないという自分が争う中少しづつ近付き、ハジメの元に辿り着いた瞬間力が抜けてへたりこんだ。 「ハジメ…?」 向こうを向いて倒れているハジメの肩に触れる。 温かみがあるかどうかは服のせいで分からなかった。 起きて欲しいのに呼びかける声はどうしても小さくなってしまって、肩を揺すりたい手は力が入らなくて服だけを擦っていた。 「なぁ…」 俺どうしたらいいの、なんで何も言わねーの、なぁ じわじわ滲む視界が鬱陶しくて服の袖で目元を拭うと、ゴトン、と鈍い音。 ハッとして息を潜めると、同時に目の前のハジメが、動いた。 「う…」 寝起きのような声を発したかと思えば一気に起き上がり、振り返って俺の存在に気付いたハジメと目が合う。 「うわ!…びっ…くりした、何してるの」 「な…!!!」 何してるのじゃねぇよこっちのセリフだボケ死んだかと思ったんだぞビックリさせんなバカ 頭の中では一気に言葉が浮かんで来るのに、何一つ発せずに結局出たのは涙だった。 「え、ど、どうしたの、大丈夫」 ボロボロ涙を零す俺を見て、慌ててしゃがみこんで視線を合わせてくるハジメの肩を、力が入らない手で殴る。 「ボケ!」 「ええ!」 殴られた上に暴言を吐かれたハジメは間抜けな顔でびっくりして、戸惑いながら、恐る恐る抱きついてきた。 「ごめん…ごめんね」 ぜってー分かってねぇ。急に起き上がってごめんって意味だろそれ。 そう思いつつも息が詰まって何も言えず、ハジメの首元に頭を擦り付けて… 「くっっっっせぇ!!!!!!」 「わ!!」 まさかとは思ったがゲームをしている間風呂にも入っていなかったらしい。 そんな成人男性が臭わない訳がなく。 仰け反った俺は勢いそのままに「風呂入って来い!」とハジメをリビングから追い出した。 ええ、だのあの、だの言っていたが、キッと睨めば大人しく風呂に行ったハジメを見送り、静かになったリビングで先程のことを思い返していた。 本当に怖かった、本当に焦った。 冷静に考えればただの寝落ちだと分かるが、普段そんな姿を見ない上に連日まともに会話していなかったから余計に最悪の事態を想像してしまった。 落ち着きを取り戻しじんわりと体温が戻ってくる指先を握りしめて、転がっていたコントローラーを手に取る。 先程の物音はコントローラーがハジメの手から滑り落ちた音だったらしい。 「(握りしめたまま寝るとか子供かよ…)」 呆れながら拾い上げると、その振動で反応したのか突然目の前のテレビ画面が明るくなりバトルが再開される。 「え、うわ」 もはや聞き馴染みがありすぎるほどの戦闘BGMと共に殴りかかってくる敵。 「はー!?操作方法とか…!わっかんね…!」 ハジメがプレイしている画面をぼんやり眺めていたくらいで、このゲームシリーズ自体初めて触る俺は適当にボタンを連打していく。 激しく動く敵から与えられ続けるダメージにイライラしつつ、ここで死んだらハジメに怒られそうな気がして必死に操作していると段々操作方法が掴めてきた。 「ちょ、か、回復無いんか…」 先程まで減り続けていたHPが操作することにより安定して、しかし反撃しようにも残りHPの少なさに逃げ回るしかない。 ぐるぐるフィールドを逃げ回っているうちに敵の攻撃パターンが見えてきて、余裕が出来た隙に画面を見回すと画面の端の方にポーションの文字。 「これか…!」 敵が大きな攻撃をして来たタイミングで使用し、HPが全回復したところでにんまりと口角が上がった。 「よくもやってくれうわぁ!!!」 突然包まれる感覚に飛び跳ねコントローラーを落としそうになるが俺の手ごと包んでくる手。 「凄いね、生きてたの」 「は、お前…!髪乾かして来いよ!冷てえ!」 「ん、後で…」 ボタボタと雫が垂れてきて暴れるも抑え込まれて、俺の指ごとコントローラーを操作するハジメ。 途端に動きが素早くなった画面のキャラを見守りつつ、背後の温かさとシャワー後のハジメの匂い、そして力強く動く指に心底ほっとした。 よかった、あー、まじでよかった。生きてて良かった。キャラなんてどうでもいい、ハジメが生きてて良かった。 一瞬ゲームに気を取られていたものの、改めて感じる温かさに体の力を抜いた。 当のハジメはすっかりゲームに夢中で、脱力した俺が寄りかかっても何の反応もしない。 顔が見たくなったがほぼ伸し掛る勢いで包まれているため動けない。 ただ激しく動くゲーム画面と、ハジメと俺の指。 邪魔じゃねーのかな、と手を抜こうとすればその動きさえも封じられた。 まあつまり大人しくしてろってことね… 言いたいことは山ほどあるが、寝落ち限界まで奮闘していた敵と再戦中とあらば邪魔する訳にもいかないか、とされるがままになっていた。 どんどん減っていく敵のHPに、どんどん熱くなる指先。 「(あれ、なんか…)」 …えろくね? そう考えてからはもうだめだった。 毎晩隣で熱を感じながら寝ていた俺らが、ここ数日間一切触れ合わず。 ゲーム発売前日だって俺から誘ったのに断られたのだ。 「(やばい…)」 激しくコントローラーを操作する手が自分の体を這う姿を想像して、下腹部がじくじくと反応し始める。 シャワー後の熱気とハジメの匂いもまずかった。 動けない体と捉えられたままの手に与えられる刺激が快感に変わっていく。 呼吸が浅く、熱をおび、後頭部をハジメの胸に擦り付けたところでvictoryの文字と共に華やかなBGMが流れてきた。 「は、終わった……?」 「うん」 擦り付けた頭に頬擦りされて、俺の理性は限界を迎えた。 「じゃ、早く、抱いて」 切れ切れの俺の言葉に、ハジメが息を飲んだのが合図だった。 腰にタオルを巻いただけだったハジメに引っ張って来られた寝室で、俺は手早く丸裸にされた後ベッドの上で四つん這いにさせられていた。 「んん…!は、待って…ッ」 どろりと垂らされたローションはハジメの手で温められ、ぬめりとともに早急に押し広げられる後ろ。 久々なことと、ボスを倒した興奮からかいつもより激しく、俺の待ったの声も聞こえていない様子だった。 ぐちぐちといやらしい音を聞きながら、ハジメの髪から零れる水滴にビクビク反応していると、前をキツく握り込まれる。 「ああッ!!」 水滴の比じゃない刺激に大きく反応すれば後ろで笑う気配がした。 「ん…!なに…、笑って…!」 後ろも前も弄られて、快感に跳ねながら振り返れば満足気な顔をしたハジメの姿。 「気持ちよさそう、嬉しい」 「っ…!」 明らかにハジメだって興奮しているくせに、余裕な態度にムカついて体勢を変えようと指から逃げると、離れた倍の距離を引き戻された。 「ぅわ…!」 「なんで」 不満げな声よりぴったりとくっついた背中に当たる熱に気を取られていると、後ろから顎を掴まれて振り向かせられる。 「ん!!…んぅ…は……ッ…」 口を食われたかと思えば熱い熱い舌を捩じ込まれて、必死に吸い付くうちにまた後ろを弄られ始めた。 「あ…!ふ…ッ…んん……ッ!」 固定された上半身に、弄られ続ける口内と後ろ。 息苦しさに身を捩れば、不安そうな顔をしたハジメと目が合った。 「また泣いてる」 「こっ、これは…!」 さっきのとは違う、そう言いかける俺の目尻をべろりと舐め上げ、額を合わせてくるハジメ。 ずっとゲームに釘付けだった目が、至近距離で俺だけを見ていることに満足していたら、首を傾げて続きを促された。 「さっきのは…いや、後で言う。それより」 ちゅ、とすぐ側の唇に吸い付けば、心配と、興奮を混ぜこぜにした表情で押し倒された。 段々と深くなるキスに、いつの間にか足されたローション。 向き合った体勢を活かして首と腰に巻き付くと、今度こそ興奮100%の表情を見せてくれた。 だが俺が余裕だったのもそこまで。 舌を吸われ、上顎を舐められ、乳首をつねられ、前立腺を刺激され、身体中が気持ちよくて、何も考えられなくなって、ハジメがゴムを手に取った時にはどろどろに溶けていた。 荒い息をする俺に被さるハジメも熱い息を吐いていて、口に噛み付かれた瞬間に入ってきた熱量に思わず手を突き出すが物ともせずに押し進んできて、全部入る頃には両手纏めて頭上に固定されていた。 「はあ…!あ…!んぅ…」 「は……は……ッ」 押さえ付けて、のしかかって、唇をぶつけ合って、もっと奥に行きたいとでも言うように揺すって擦って、それから少し離れて行くハジメに釣られて目を開ければ、GOサインを待つ大型犬のような目と視線が絡んだ。 「は…!いい、よ……んんッ!!」 笑って頷けば動き出すハジメ。 固定されたままの手が俺の逃げ場を封じて、長く重いピストンの全部を受け止めた。 「あ…ッ!は…ッ…」 「は……ッ」 俺の声とハジメの吐息、ぶつかり合う体に響く水音。 起きた時あんなにも冷たかったシーツが今は熱気を吸ってしっとりと温かく、足裏で引っ張って、伸びて、イクと同時にハジメを締め付けて、その後放たれた熱に安堵して、俺はまた快感とは別の涙を少しだけ零した。 荒い息が落ち着いて来た頃、並んで倒れ込んでいたハジメがモソモソと動いてベッドの上で正座をし始めた。 その姿はなんともマヌケというか、男らしいというか…やっぱりマヌケ。 でも何か言いたげなその姿に気怠い体を起こして向き合い、俺も全裸でマヌケな正座男になった。 「あの…」 「…うん」 そわそわ、ゆらゆら、落ち着きの無い目を眺めつつ、せめて下だけでも履くべきか迷っていると、ぺこん、とハジメが頭を下げて、小さなつむじとご対面した。 「ゲームばっかで、ごめん…」 大きな男の小さく弱い声が届いて、俺はつむじをぐりぐりと混ぜる。 「うん、まあ…ゲームは良いけど、ちゃんと寝てな」 混ぜられるまま、ぐりんぐりんと揺れる頭を少し眺めて、ぎゅっと抱きついて、耳を齧って、くすぐったそうにするハジメに笑って、息をつく。 「まじで焦った。起きても居なくて寂しくて、リビング行ったら倒れてんだもん。ゲームのし過ぎで死んだとか、俺救急隊員さんに何て説明したらいいんだよって思った」 頭をくっつけているせいで喋ると振動を感じて、それが心地良くて目を閉じて、温もりを感じて、じっとしていたら、ゆっくりと体重を掛けられて、何故かまた押し倒されていた。 「あ?」 「…寂しかった?」 「…あ」 しまった、そう思った時にはもう遅く、喜びに溢れて歪む口元と、また元気になったハジメの物が視界に入って、俺は呆れて笑って、だらりと体の力を抜いた。 「バーカ!」

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