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『魔界貴族“ティーベル”に並ぶ腕の持ち主』
魔界貴族最高峰、ティベールと同等の立場であるのは、同じ貴族出身じゃなきゃ成せない。況してや、魔王の横に、並べる存在など指で数えられるくらいだ。
彼方は、七大天使が七人存在するのは知っていても、ウリエルを一度たりと拝んだ事の無い人。
その、輝かしいばかりのオーラと、美しさが禍を招かなけれ僕にとっては嬉しい事。
しかし、逆を考えたら不安が大き過ぎる。
何せ、女神に並ぶ美貌の持ち主を目にした瞬間を想定した場合を、浮かべた。
脳裏に浮かぶのは、とても複雑な表情。困っていて、憂いっている様な。
彼は、優柔不断の部分がある。
『人の幸せを喜べないで、自分の幸せを喜ぼうなど馬鹿ですか?』と云う言葉が付いてくる。
何か、思わず微笑いたくなる自分にむず痒さを覚えつつ、照れた。同朋に見られたら少し恥ずかしい現場だ。
しかし、悠長に気を緩めている場合ではないのも解っている。
一寸の、緩みが災いを招く事を七大天使に属する前に彼は、上司から習っていた。それが危険感知をしなければ命取りになるのだと口煩く言われたものだ。
能力を開花させる基礎は大切で、訓練をさせられたのを今でも覚えている。
感覚を研ぎ澄ませながら聞こえない声に耳を傾けるという試練の時は、大分苦労した。
だけど、ウリエル…。
僕が、心配しているのは、其処じゃなく。
あの時『魔界貴族最高峰“ティーベル”に、並ぶ腕前で、ウリエルみたく、術に、長けている』と、言ったら。
君は、どうしてた?
そう、告げた瞬間。
鳴呼…。
君は、微笑うんだろうな。
一寸の、歪みもなく。
真っ直ぐと、見つめて。
共に、試練を受けた時みたく、美しい笑顔を、振り撒ける状態なら、僕は、君の勝利を、願うよ。
そう、囁きたかった…。
下界へ、降りた、美しい七大天使『ウリエル』。
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