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「ミカエルやラファエルみたいに掛かって来ないんだな…」 真顔で、吐く男性は、ウリエルを映した。 「彼等には彼等の策があります。そして私にも無論あります」 言葉を啄む唇が、美味しそうな色をしているとゼウダーは思う。 「的確な判断だと思う。数千という下級悪魔を死滅に追いやる考え方は、他の大天使では思い付かない…」 「魔界帝国侯爵様に褒めて頂き、光栄です。それで、貴方様は如何なさいますか?兵士天使達の殆どは能天使(パワーズ)です」 戦闘方法を素直に褒めると、ウリエルは微かな笑みを浮かべて、挑戦的な科白を溢す。 「はははっ、随分と…侮られたものだ…」 高らかな嗤いが空気中に響いていく。ゼウダーの青金色の双眸が細められ、ウリエルを捉えた。 金色にも見えなくない瞳は不思議な色合いを感じさせた。 「…」 「気に入った…」 「何を」 「ソナタの術を封じさせてもらった…」 気付いた時には、既に、遅かった。 体の自由が利かないウリエルは、身を捩ろうと必死。しかし、解ける気配もなく。 「我の術を解くなどと考えるな。無理な足掻きだ…」 ゼウダーは椅子から立ち上がり、指を鳴らしたのであった。 妖し気な雰囲気は彼を取り囲んで包んでいく。独特な気に呑まれそうになり、ハッとなった。 ー…これが魔界帝国、一、ニを争う貴族の。 魔王の右腕である男性…。 流石、魔界貴族最高峰『ティーベル』に、並ぶ人物だと、思い知らされる。 知識の中に、貴族の事は、叩き込んでいたが。博識だったと、今になって思う。 『魔界貴族には、主に『ティーベル』『セラ』『プリゾ』が、有名です。特に『プリゾ』は、代々が、魔王の右腕として、仕えてきた者』 そう、昔に、母から教えてもらいましたっけ。 遠い記憶の中で、忘れていましたが。 目の前に、居る男が、噂の『プリゾ』の主。

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