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第3話-2

◆◇◆  はあ……と俺はため息をつく。  まだ昼なのだが、きょうで二十回目である。  悪魔の特訓が続いて数週間が経つ。  ちなみに開発が始まってから、レベルはぐんぐんと上がっている。一歩一歩を踏みしめるように歩くと、背骨がぎしぎしときしんだ。 「……きちく。……おに……、冷血漢」  腰が、動かない。  今日は朝から森に行って、昼は宿にこもってレベルを上げという尻の鍛錬をしていた。  絶頂をなんどもむかえた俺を残して、野郎ふたりは階下の食堂で茶をすすっている。  ケツにいれると、脱童貞になるので交互に口に咥えさせられたり、咽喉で扱いたりだしたりされる。  尻をほじくられながら、口でご奉仕しなければならないとかつらい。  ほんとなんなんだよ。くそ。  そんでもって内股も尻もひりひりと痛い。セックスと変わらない行為をひたすらやっている気がする……。  くそくそくそくそくそ。  なにが聖騎士だ。  猛獣じゃねぇか。  戦ってヒットポイントとマジックポイントが足りないとかわめいていたくせに、宿に帰ってきたらすぐに脱がされる羽目になる。  まったくもって意味がわからない。 「……身体開発なんてもうしない。つうか、したくない。つうか、しない」  へなへなとなりながら食堂につくと、俺は手すりにしがみついて言い放った。はっきりと宣言したつもりが、ふたりは無視して茶を飲んでいる。 「……この茶うまいな」 「うん、竜の谷からいい茶葉が手に入ったからさ。あ、ヤバノちゃんやっと起きたんだね。おはよ~」 「ああ、おはよう」 「……おはようじゃない」  迫力のある眼光で睨むが、ふたりは茶菓子に爪楊枝を刺してほおばる。 「怒ることはない。やり方は魔導書の通りにやっている。毎日少しずつ慣らしてレベルも上がっているだろう」 「そうだよ。まだ媚薬入り練り薬なんてたくさんあるし、スライムもきもちよかったでしょ?」  くっ。たしかにきもちよかったが、そうじゃない。 「ぐっ。そ、それは……」  たしかにうねうねとしたゼリー状のものを被せられて、さらに肉棒を一本追加、挿入されてこすりあげられた。  黒騎士に素股されつつ、白魔道士と兜合わせをして三人なかよく達した……。  きもちいいけど、なんかちがう……。  かわいい女の子に尻開発されたいのに、ガチムチ野郎二人にほじくられるのは全然うれしくない。  そんなふたりはふわふわとした砂糖菓子をむしゃむしゃと食べつつ、なごやかに会話を交わす。 「魔導書に書いてあるとおり、乳首だけでもイケるようになってきたじゃん。最近レベルが頭打ちだけどさ、おちんちんを愛撫しないでメスイキもできるようになったし、もう少しなんだから頑張っていこうよ~」 「そうだ」  二人はうんうんとうなずいているが、まったくもって先ほどの言葉を解するこころはないようだ。 「なにごとも練習あるのみだよ〜!」 「そうだ」  あっちからビキビキ、こっちからもバキバキの棒を口や股につっこまれ、へんなオモチャで尻をひろげられるわけで。そんなのが、毎日続いているわけで……。 「も、もういやだっつうのっ」 「そんなこと言わない〜! レベル上げまたやろうね~」 「ああ。俺も協力するからな」  この童貞絶倫をなんとかしてほしい。 「…………ちっ」  舌打ちをうつが、効果はない。  なにが皆仲よくがんばろうだ。  部活じゃねぇんだから、ふざけんな。  しかもこの二人、抱き合わせで余計なものまで買ってやがる。魔導書ってなんだ。  そんなことが書いてあるはずないとおもったが、閨の作法としてしっかりと記述されていた。  あのおっさんが相変わらず商売クソ野郎なのは変わらない。  白魔道士はにやにやと薄笑いを浮かべて、俺に顔を近づけて菓子を口にいれた。  ケセランパセランのようなふわふわが口の中で溶けてあまい。ちゅっと音をたてて唇がかぶさる。 「ふっ……」 「かわいい。アクメ顔もいいけど、そのまぬけ顔も好きだよ。それにさぁ、レベルをもっと上げたら、聖杯が見つかるかもしれないじゃん。今日だってキングコングにバハムートとキングヒドラを倒したんだよね?」 「ああ、俺が倒した」 「そ、そうだけど。こ、殺されそうになったんだぞ!」 「おまえがな」 「……ヤバノちゃんかわいそう~」  最近、遭遇するモンスターもレアキャラになってきて、こちらも必死だ。  尻が開発されるたびに掘り当てるお宝の頻度も高くなり、徐々に所持金も増えている。 「それにさ、帰り際に金貨の箱もゲットしたようだしいいじゃない~」  それにさ、じゃない。このいかにも僕がとってきましたというセリフに俺はカチンときた。 「……あのさ、ちょーっと質問!」 「なになになに? ヤバノちゃんからの質問とっても気になる~」 「真剣に聞いているんだよ。まずだ。まず、ランスは聖杯を探す気はあるのか?」 「あるよ。あるある~」  かるく返されて、俺はさらにいらっときた。  この優男、ランスロットはいつもふらふらしていつの間にか姿を消している。結局、聖杯探求は俺と黒騎士の二人でしている。  魔物討伐は黒騎士があっという間に一太刀で敵を切り倒してしまうし、目の前で起こるスチルイベントみたいなのを体験している。  それでも魔物討伐の最中にひよって叫んで戦っているわけで、どうして俺がこいつの代わりをしなければならないんだといつも思うのだ。 「ランスはいつもいないじゃんか。結局聖杯探求はクロさんと探しているし……」 「いいじゃん。ちょっとはクロと仲良くなった?」 「少しだけ仲良くなったよ……」 「……すこしだけか」 「ぐっ」  ぎろりと睨まれて、鋭い視線にひるんでしまいそうになる。  顎を掴まれてキスする仲までは進展したが、普段はこんなかんじで変わらずこわい。つうか、さっきまでこすりこすり爛れた行為をされていたわけで。 「ま、まあまあ仲いいよ」 「でもさ、ソータは僕たちと一緒にいないと娼館行きか、どっかのやばいやつに捕まっておしりが壊れるくらい開発されちゃうじゃん。それか死んじゃうんだよ。それよりはマシでしょ?」 「うっ、それは…………、そうだけど」  どっかの知らないおっさんのちんぽをいれられるよりはマシだ。  さらにそのままケツを開発されずに死ぬのもいやだ。ほかに方法がないのかと訊くと、なんというワガママなやつだとおっさんに窘められた。 「あ。話の途中なんだけど、時間だ。ちょっと野暮があるんだ。ごめんごめん。じゃあ、また夕方にでも戻ってくるよ〜」 「あ、ちょっ……」  ひらひらと手を振って立ちあがると、ランスはその場からいなくなった。クロと俺だけがテーブルに残される。 「……逃げられた。くそっ、尻のレベルなんて上げたくないのに」 「それは困る。聖杯が見つからないからな」 「聖杯なんて本当にあるんですか。あ、いや、あるんでしょうか」 「敬語は必要ない。やめろ」 「…………はい」 「ソータ、ルゥを連れて武器屋に行くぞ。剣を見たい」  圧がすごい。鋭い眼光に俺はこくりと頷いて従うしかない。 「…………はい」

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