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第1話

薄暗く生気の感じられない粛然とした空間、オークション会場の裏側の奴隷が閉じ込められている檻の中に俺――アイデン・アシュレー――は居た。 本来なら由緒ある貴族の嫡男である俺がいるべき場所ではないのだが、理由を手短に言うと俺の家が没落してしまい、俺は最低な親にお金目的に売られ、奴隷という身分にまで落ちたって話。 奴隷にまで落ちた俺のこれから辿るであろう人生はわかりきっている。 俺はこれから行われるオークションでどこぞのクソ貴族に買われ、この命尽きるまで人間以下の扱いを受けることになるだろう。奴隷に人権なんてなく、ただ命令されたことをこなすだけの人生。 これがほとんどの奴隷の生末。 俺も貴族だったころ、見るに堪えない惨い扱いを受けている奴隷を何人も見てきたし、俺自身酷い扱いをしたことがある。 それがまさか自分に降りかかるとは思っていなかったが。 そんな訳で、ここにいる全員が自分の未来に絶望している。 俺の隣の子なんて、恐怖の余りにガタガタ震えていてその振動が密着している所為か俺にまで伝わってくる。 その間にも奴隷は次々連れていかれ、檻の中は減っていき、とうとう俺の番になった。 檻から出され、手錠をされた状態で大勢の客の前に連れていかれた。会場は薄暗くその場にいた多くの顔がほとんど見えなかったが、何人か見知った顔を見つけた。 顔の見える奴らは揃いも揃って俺の体を隅々まで嘗め回すように見ていて、不愉快極まりなかった。 この中の誰かに買われるかと思うと反吐が出そうになる。 不快なこの場所から一刻も早く去りたい俺は、愛想の一つもせず、ただ無表情に立っていた。 聞こえてくるのは様々な桁の数字、つまりは俺の買値。 買値はどんどん上がっていき最終的に俺は3億で買われたらしい。 買った相手は奥のほうにいたためよく見えなかったが、その声からして男だった。 女に買われたかったっていうのが本音なんだが、文句なんて言えるはずもなく、ただ相手が俺を受け取りにくるのを待った。

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