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第21話

「……怖い?」 「…………うん」 清盛の部屋のベッドに腰掛けると、彼は腰を抱いて隣に座った。 反対の手で悠の頭を引き寄せ、ゆっくりと撫でる。 するりと降りてくる清盛の大きな手が、緊張している悠の心をなだめてくれていると知ると、愛おしい気持ちが増した。 時折耳をくすぐって、悠の笑いも誘う。 「くすぐったい……」 「くすぐってるんだから良いんだよ。悠の笑い声、俺好き」 腰にあった手も動いて、脇腹をくすぐった。 悠は身をすくめると、その拍子に頭を撫でていた逆の手が、トレーナーの下へ入ってくる。 服の下でもぞもぞと動いている手を見ていと、胸に手を当てられた。 僅かに上がっている心拍数を知られて、顔が熱くなる。 「緊張してるだろ」 「そりゃあ……」 自分でもしない性的な行為をしようと言うのだ、緊張しないはずはない。 顔を覗いてきた清盛から目を逸らすと、頭にキスをされる。 触れ方に少しずつ甘みが加わると、緊張で固まった身体も解けていくようだった。 「悠……」 こっち向いて、と呼ばれると、唇を重ねてくる。 最初は触れるだけのキスが、次第に熱を帯びてくると、悠はどうしていいか分からなくなる。 「同じようにして? 少し吸いながら……」 ぎこちないながらも言うとおりにすると、清盛は胸にあった手を動かした。 キスをしながらあちこち撫でられて、今度はくすぐったいばかりではないことに気付く。 「ん……」 鼻に抜けた吐息を漏らすと、清盛は満足したように笑い、また続ける。 「悠の唇、柔らかくて気持ちいい」 ぺろりと犬のように下唇を舐められ、続いて同じところを甘噛みされた。 思わず開いた口から彼の舌が侵入し、口内を愛撫される。 「ん……っ、ふ……」 無意識のうちに逃げていたのだろうか、清盛の片手が後頭部を押さえていて、じん、と熱くなった頭にクラクラし、彼の身体に縋る。 すると、トレーナーに潜り込んでいた手が動いて、悠の胸の先をそっと摘んだ。 「あ……っ」 ビクリと身体が離れて、その拍子に唇も離れる。 すっかり熱くなった身体に今更気付いて、彼の胸に顔をうずめた。 そんな悠に何も言わず、清盛は優しく愛撫を続ける。 胸の突起を指で擦られたり、押し潰されたりするだけで、震えるような甘い痺れが全身を走った。 「あ、……ん、……っ」 服の下で清盛の指がどう動いているかは分からない。 だけど、与えられる刺激は確実で、悠はたまらず清盛を見た。 生理的に浮かんだ涙で視界は悪かったが、一瞬彼が息を飲んだ気がする。 「キヨ……」 「悠可愛い……ここ、硬くなってきた」 「あっ……」 ここ、と言われて反対側の乳首をいじられると、腰が勝手に動いた。 自分でもいやらしい動きになったのが分かって、やだやだと首を振る。 「何で? すっげー可愛くて、俺イキそうなんだけど。ほら、脱いで……」 上半身だけするりと脱がされると、清盛はああ、と苦しそうに呟いた。 そしてそっとベッドに押し倒される。 「……っ、んんっ!」 首筋をべろりと舐められ、背中が浮いた。 その間も清盛の手は止まらず、胸やおなかを指の先だけで撫でてくる。 「やっ……、あ……っ」 勝手に出てくる信じられないほど甘い声と、逃げうつ身体は、もう悠の意思ではどうにもならなかった。 与えられる刺激を敏感に感じ取り、ゾクゾクと鳥肌が立つような感覚に耐えながら、どうしてこれで身体が熱くなるのだろう、と思う。 「……っ、ん……」 しかし全く嫌ではなかった。 それどころか自分だけではなく、清盛も、甘い声を上げる悠を見て興奮しているのが、どうしようもなく嬉しかった。 「ん……っ、あ、……キヨ……っ」 下着の中に入り込んだ清盛の手が、悠の分身を掴んでゆっくり擦り上げてくる。 今までよりもはっきりとした快感が襲って、想像以上のそれに、悠は困惑した。 「あっ……うそ、キヨだめ、出ちゃう……っ」 慌てて清盛の手を掴んで止めようとしたが、もう片方の手でやんわりと止められる。 そのままベッドに縫い付けられ、意味もなく足でシーツを蹴り、いやいやと首を振った。 「大丈夫だから」 「――あ、……あ、あぁ……っ!」 一際大きく身体を震わせると、一気に放熱した。 強すぎる刺激と慣れない行為で疲れてしまった悠は、しばらく呆然としてしまう。 清盛がなだめるように目尻に溜まった涙を吸い取ってくれるが、それすらもビクリと反応してしまった。 「んな、とこ……舐めるなよ……」 上がった息の合間に抗議すると、だって可愛いんだもん、とどうしようもない言葉が返ってくる。 射精してボーっとしているうちに、清盛は悠と自分の衣類を全て脱ぎ去ってしまった。 「うわ……悠、脚も綺麗……」 「んんっ!」 抱え上げられた左足の内側を甘噛みされ、くぐもった声が上がる。 敏感な場所に当たる清盛の吐息が熱くて、いたたまれなくなってしまう。 「き、キヨ……噛まないで……」 「どうして? 痛い?」 痛くはないけど、と言葉を切ると、清盛は悠から離れてベッドの下を探り出した。 もしかして止めてしまうのか、と思った悠は、不安な顔をしていたらしい、大丈夫だよ、と額にキスされた。 ベッドの下から何かを見つけた清盛は、手のひらサイズのボトルを手にしていた。 その中身を手に取り、両手で擦り合わせて温める。 「悠、こっちに来て」 ベッドヘッドにもたれて座った清盛は、自らの脚の上に悠を座らせる。 戸惑いながら言うことを聞いた悠は、そこに座ってからその体勢がすごく恥ずかしいことに気付いた。 「……っ、キヨの……当たってる……」 時々ひくりと動くそれは、悠の下腹に当たり、熱くなっていることを主張している。 当たり前だが悠のそれとは全然違い、その存在に無意識に息を飲んでいた。 「なーにエロい目で見てるんだよ?」 「ち、ちが……」 「そう? じゃ、ちょっと我慢しててな」 清盛は軽く笑ってそう言うと、悠の後ろに手を伸ばした。 尻の狭間をさっきボトルから出したもので濡らし、粘膜の入り口を撫でてくる。 「ん……っ」 くすぐったいのと、むずがゆいのが混ざって思わず腰が逃げると、清盛は先程のボトルからまた中身を出し、そこに塗りつけてくる。 「これ、中身なに……?」 逃げたくなる身体を必死に押さえつつ、悠は清盛の身体にしがみついた。 「ん? ローション。これを丁寧にしないと、怪我するんだってさ」 おそらくその辺の知識は藤本から得たのだろう、時折前もいじり、少しずつ指を沈めていった。 (もしかして、男同士でもここを使えば、できるんだ) 清盛とつながりたい。一つになりたい。悠は初めて彼に欲情した。 「あー……すげぇ。この中って、柔らかいんだな……」 恍惚と呟く清盛は、すっかり息も上がってしまっている。 その様子がどうしようもなく愛しくて、心臓がトクン、と鳴った。 「あ、今中がキュッてなった」 嬉しそうに呟く清盛は、悠の粘膜を優しく擦り、中を広げていく。 動く指の異物感と圧迫感に耐えていると、時折それらとは違う感覚が、悠の背筋を震わせる。 「ん……っ」 思わず声を上げると、中が動いたのが自分でも分かった。 清盛の長い指の形が感じられて、そんなことに興奮してしまう。 「あ、悠、また勃ってきた」 「あっ、バカっ……嫌だ、何か変……っ」 後ろを意識したとたん、清盛が触れているところよりもっと奥が疼いた。 今のままではもどかしさばかりが募り、自分で腰を動かしてしまいそうになるのを必死で抑える。 それがいけなかったのか、何故か涙がボロボロとこぼれて、清盛にしがみついた。 「キヨ~……」 もっとちゃんと感じるところに触れてほしい。 こんなもどかしい刺激ばかりではおかしくなりそうだ、と悠は額を清盛の胸に擦り付けた。 「ああもう、可愛すぎだろ……」 「ああっ!」 怒ったように清盛が吐き捨てたあと、悠の望んだ場所に指が触れた。 ローションのおかげでぬるついたそこは、卑猥な音を立ててかき混ぜられる。 「ひ……っ、う……、うぁ……っ」 泣いているせいでまともな言葉が出てこない悠は、飛んでいきそうな意識をつなぎとめるべく、しがみついた手にさらに力を込める。 「悠、悠……入れていい? 俺限界」 清盛の指で施される快感は、悠の脳みそを麻痺させ、コクコクとうなずいたのも分からなかった。 そのまま乱暴とも言えるような勢いでベッドに押し倒され、むさぼるような口付けを交わす。 「んっ、んんっ…………はぁっ」 あれだけ性的なものに対して嫌悪していたのに、今こうして清盛ががっついてくれるのが嬉しかった。 そう思っただけでもまた涙が浮かんでくる。どうやら涙腺が壊れてしまったらしい。 キスの合間に脚を愛撫されながら大きく広げられ、後ろに清盛がぴたりと付いた。 十分熱くなったと思った悠の入り口は、清盛の熱の方が高かった。 「痛かったら言って。一応気をつけるから」 完全に欲情している清盛の目はぎらついていて、悠が痛いと言ったところで止めてくれそ うになかった。 男の子なんだな、とこんなときにふと呑気なことを思う。 「……っ、ん!」 ゆっくりと清盛が入ってくる。すぐに彼を迎え入れた粘膜は、清盛の形に変え、彼をキュッと抱きしめた。 しかし正直指とは比べ物にならない圧迫感で、苦しいばかりだ。 「はあっ、……あ、はっ……」 「すっげぇ、何コレ……」 ローションをたっぷり使ったおかげで、全てを受け入れることができた悠は、清盛の苦しそうなその言葉を聞いて、また後ろが疼いたのを感じた。 「気持ち、いいの……?」 眉間に皺を寄せる清盛のそこを、指で撫でると、その手を取られ、指を食まれた。 同時に中の清盛もグッと体積を増し、さらに悠を苦しめる。 「あっ! なん、で、またおっきく……っ」 「ホントお前、無自覚だから困る……っ」 「――あ! あっ、あっ、や、やだっ!」 いきなり腰を動かし始めた清盛に、今までのものとは比べ物にならないほどの刺激が与えられる。 擦れた箇所が熱くなり疼いて、さらにそこを刺激してほしいと思ってしまう。 こんなはしたない考えを持つなんて、と悠は自分が怖くなった。 自分が求めたら、清盛は望むまましてくれるだろう。 しかし、そうされると戻ってこられないような気がして、怖い。 こんな自分を知ったら、清盛は引かないだろうか? 「キヨ、キヨ……」 はぁはぁと荒い息の中、掠れた声で呼ぶと、瞼にキスをくれた。 言ってごらん、と優しく促されると、壊れた涙腺はまた洪水を起こす。 「悠、お前……どうしようもなく感じると、涙腺弱くなるのな……」 泣き出した悠を見て少し冷静になれたのか、清盛は動きを緩めた。 可愛い、と頬を撫でられ、悠が少し落ち着くのを待ってくれる。 目尻から落ちる涙を時折拭ってくれて、その優しい仕草に好かれているのだ、と実感する。 「キヨ、もっと、して……」 「……悠っ?」 「俺、お前のすること、全部、好……っ、あっ、あっ、あぁっ!」 伝えたかったことは清盛が激しく動いたため、途中で途切れてしまった。 身体の奥から背中を通って脳へと痺れが伝わり、背中が浮き上がる。 がくがくと揺さぶられ、脳まで撹拌されたみたいで意識が遠くなる。 何か掴まるものが欲しくて、清盛のたくましい腕を掴んだら、一瞬視界が白くなった。 音も聞こえないのに快感だけを悠は感じ取り、再び視界と音が戻ってきたときには、二度目の射精をしていた。 「……っ、はぁっ、はぁっ……」 同じように清盛も頂点を迎えたらしく、悠の上で身体をひくつかせていた。 ぽたりと汗が悠の胸に落ちてきて、互いに大量の汗をかいていることすら気付いていなかった。 「ああくそ、やっぱ持たなかった……」 悔しそうに呟く清盛の言葉は、どんな意味なのかよく分からなかったが、何度か軽いキスを交わすと、いてて、と清盛が腕を見た。 悠もつられてそこを見ると、自分が掴んでいた部分が赤黒くなっていて、おまけに爪で引っ掻いたのか、血まで出ていた。 「わっ、あ、ごめん……」 「いいよ。でも今度傷付けるなら、背中がいいな」 またまた悠にはよく分からない事を言って、頭を撫でてくる。 怒っているようでもないので、悠は気にせず微笑んだ。すると清盛はキスを唇に落とす。 そのまま無言で色んなところにそれをし、敏感になった肌を再び撫で始める。 悠はまだ中に入っていた清盛が、再び硬度を増していることに気付いた。 「ちょ……っ、あっ、何でまた……っ」 挿入されたまま深い位置で揺すられ、たまらず声を上げる。 二度の射精ですでに身体はだるく、そんな気力はないはずなのに、初めての快感を知った身体は清盛をきつく締め付けた。 「一回で終わるわけ、ないだろ? 悠の中、すっげぇ気持ちいいし」 「んっ、んっ、んぅ……っ、んあっ、や、やだ……っ」 この短い間で悠の良いところを探し当てた清盛は、そこを優しく擦り上げ、無理なく悠の身体を高めていく。 再び涙腺が決壊した悠は、泣きながら首を振るしかなかった。 さっきは緊張でそれどころじゃなかったけど、こんなに優しく攻められたら、恥ずかしいのと嬉しいのでぐちゃぐちゃになってしまう。 「悠、好きだよ。可愛い……すっげぇ可愛い」 だんだん揺さぶりが大きくなるにつれて、排泄感が増していくこの感覚。 それと比例するように涙は止まらなくなる。 清盛はそれを拭いながら、悠を攻めるのを止めない。 「き、キヨっ……また出ちゃうっ」 「悠、そういう時は、イクって言うんだ。ほら、言って」 「イク、イッちゃう……っ、キヨ……っ」 何も知らないまま、その手の言葉を教えられ、素直に口にしてしまう。 そうすると、自分の状態を相手に教えるだけでなく、これが気持ちいいことなんだと再認識し、興奮が煽られることを知った。 腰が勝手に跳ね、後ろが信じられないほどうねったのが分かり、さらに刺激を求める貪欲な身体を知る。 「く……っ」 苦しげに眉をひそめた清盛は、さらに律動を激しくし、悠の柔らかな唇に噛み付いてくる。 「あぁっ、んっ、んんっ、んー……っ!」 「……あー……、悠、悠……俺もイク……一緒にいこう」 ぎゅうぎゅうと抱きしめられたまま、早く腰を動かされ声も出なかった。 汗で湿った肌を全身で抱きしめ、耳もとで清盛の声交じりの荒い息を感じながら、共に果てたのだった。

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