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第22話
次の日、ゆっくりと覚醒した悠は、目の前で清盛が顔を眺めていることに気付いた。
幸せそうな笑顔で髪を梳かれ、昨晩のことを一気に思い出し、恥ずかしくなる。
あれから悠はほとんど意識を失うようにして眠ってしまい、素っ裸のままだったからだ。
「身体は何ともないか?」
「……うん」
若干だるさは残るものの、気持ちは満たされていたのでそう答えた。
同じく裸のままの清盛の体温を直接感じながら、その心地よさにまた夢に引き戻されそうだった。
「ご飯は適当に食べるし、悠もいるから大丈夫」
「アンタそれだけ無茶させといて、悠ちゃんを頼るんじゃないわよ」
清盛は悠の背後に話しかける。その声を聞いて悠は青ざめた。
二人きりだと思っていた清盛の部屋に、めったに帰ってこない絵美もいたからだ。
完全に身体が固まってしまって、声すら出ない。
しかし、そんな悠の心情を知ってか、絵美は話しかけずにいてくれたのが救いだ。
「取り敢えず、もう行くわね。アンタも持っていく荷物、忘れないように」
なかなか帰ってこない絵美は、もうこの家に戻ってくることは少ないのだろう。
業者を使って自分の荷物を新居に移し終えたらしい絵美は、少し寂しそうにそう言い残していった。
「き、キヨ……もしかしなくても……」
「うん、完全にバレたな。でも母さん、喜んでた。俺たちと悠の家族は、ずっとあの事件のことを気にしていたから」
身勝手な大人のせいで傷ついた心は、やはり一番身近な人たちが見守っていてくれたことに、どうしようもなく泣きたい気持ちになる。
「キヨ……」
悠はその気持ちをどうにか表したくて、自ら身体を起こし、清盛の唇にそっとキスをした。
「…………ありがとう」
そう呟くと、清盛は何も言わずに悠の頭を胸に引き寄せた。
そこがじわりと濡れていくのも構わず、悠が落ち着くまで、ずっと頭を撫でてくれた。
願わくば、この穏やかで幸せな時間がずっと続きますように。
そしてこの腕の中の恋人が、少しだけ、人と関わることを恐れないように……そのためなら今まで遊んできた分、ちょっと真面目になってみるのも良いかもしれない。
これからもずっと、あなたの笑顔が欲しいから。
(清盛✕悠編 終)
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