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#33

俺たちが健太君の家に着く頃には、 もう既に健太君の家の窓から電気の光が漏れていた。 駐車場には、白線を踏むギリギリに止められた斜めを向いた車。 それだけで健太君の余裕のなさが想像できて 口角が上がる。 「…アリスさん、まだ顔赤いけど…僕、家まで送りましょうか?」 シートベルトを外し、後ろを振り返る山内君に ニコッとここ最近昼職で覚えた営業スマイルを作って見せた。 「ううん、大丈夫。今俺と一緒に健太君のところ行ったら…山内君、多分無傷じゃ帰れないよっ」 全く意味不明だとでも言わんばかりの山内君のきょとんとした表情に、 思わずクスリと笑ってしまう。 「俺の大切な番、待たせてるからもう行くね? ありがとね!山内君っ」 「え、あ……気をつけて!」 後部座席のドアを閉めれば 俺はまっすぐにアパートの、ある部屋を目指した。 203号室。 インターホンも鳴らさずに、迷わず扉に手をかける。 ガチャンと音を立てたそこは、やはり鍵なんてかけられていなくて グッと扉を引き寄せれば いとも簡単に、むしろ俺が力なんか加えずとも 勢いよく開け放たれて 「……遅い」 「健太君が早いんだよ」 腕を引かれて強引に抱き寄せられた。 「…山内は?」 「もう帰ったよ」 「…よかった。一緒にきたら何すっかわかんなかったから…」 「ふふ…そう思って断った。 ねえ、早くあっち……行こ?」 俺が指すのは、電気のついたリビングではなく しんと静まり返る寝室で。 「…薬飲ま、ねえと……俺、知りませんよ…っ」 ゾクゾクと湧き上がる熱と 健太君を求めてどうしようもないほど反応する身体。 薬なんて飲みたくない。 健太君と、貪り合うような 綺麗だなんて冗談でも言えない、忘れられないセックスをしたい。 抱き抱えられて、リビングを無視して一直線に向かうその部屋。 途中、むせ返るほどのバニラの香りが鼻についたけれど そんなもの、健太君の匂いがすぐにかき消した。 俺だけを誘う、俺のためだけの匂いが この上なく幸せで この上なく、欲を掻き立てる。 乱暴に開けられた部屋で、壁を叩きつける音と共にパッと鮮明になった視界で 明るい電気に照らされたまま ばふっとベッドに投げられた。 途端に広がる健太君の強い匂いに 理性なんか何処かへ行って、 今の俺はただ、αを求める淫乱で恥じらいもクソもない 発情したΩだ。 「っはは、電気つけたまま?」 「…いいでしょ。もう隠すモンも何もないんだから」 「うん。……健太君の全部、俺に…見せて」 噛みつくようなキスをした。

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