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新婚初夜

男はフロントに行き、「部屋を用意して」と言ってカードキーを受け取ると、戸惑う僕の手を引いてエレベーターに乗り込んだ。 「名前は?」 「……ゆき」  葉山友紀。フルネームは名乗らなかったが、男も同じように「俺は、アキ」とフルネームを名乗らなかった。 「お前は甘いにおいがするな」  それは、Ωの発情期のフェロモンの匂いだろうか。発情期はまだ先のはずだ。だから、甘い匂いなんてしないはずだが、この上等なαに誘発されているのかもしれない。 「あなたも甘い匂いがします」  答えるとその逞しい胸に抱きこまれた。男は僕よりも背も高く、逞しい。Ωがαに従ってしまうのは、よりよい子孫を残すためだ。番となったαとΩからはαが産まれる確率が高い。  抱きこまれるとさらに甘い匂いに包まれてしまう。 『チーン』とチープな音を立てて目的の階に到着したことを伝えた。アキは僕の手を引いて部屋のドアを開けると中へと連れ込んだ。一見してここが上等な部屋だと分かる。一面ガラス張りの窓からは外の景色が一望でき、バーカウンターまで完備されていたが、アキは足を止めることなく部屋を横切って奥の扉を開き、部屋を埋める大きなベッドに僕を押し倒した。 「初対面だというのにはしたないな」  そう呟きながら、指先が顎をすくって口づけをした。それはすぐに深いものへと変わり、噛みつくほどに激しかった。 「んっ……はぁ、はっ……」  すぐに息が上がるが、さらに濃い甘い匂いに興奮は煽られるばかりだ。口づけたまま強引にスーツを脱がされて、ワイシャツをはぎ取られた。  男となんて経験は無い。Ωだが、受け入れたことなど無い。 「無垢なのか?」  唇を離して、僕の両側に両手をついて起き上がったアキが興奮した声で呟いた。 「……無垢の意味は分からないけど、男とは初めてだし、αとも経験は無い」 「それを無垢と言うんだ」  アキは笑うと唇を再び合わせてから首へと移動し、肌に痕を付けた。 「んッ……あっ」  普段は何も感じない胸の突起に舌を這わされて、甘い声があふれた。反対の乳首は指で摘ままれた。 「何だ、ここが感じるのか?」

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