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もう一つの運命

 だから、すぐに分かった。 「さ、沢木さん発情期?!。え、じゃあ、和人さんαだから……」  慌てた僕に和人さんは、「違うと思うよ」と笑った。  和人はうずくまったままの沢木の頭をゆっくりと撫でた。 「ああ、そうだね」  何かに納得したように和人は頷いて、「惜しいなぁ」と言って、赤黒く残る番の跡を指先で撫でた。  途端に沢木の香りが広がる。  彰人の番だった沢木。僕という運命の番が現れて番を解消したから、発情期は再開している。彰人と僕は番になって互いのフェロモンにしか発情しないから、だからすぐに分かった。  ここで影響されるのはΩの沢木とαの和人だけ。  そして、沢木は発情期じゃない。 「見つけたよ。俺の運命」  和人は沢木の腕を掴んで無理やり立たせた。沢木はふらふらとよろけて、和人はそれを抱き上げると、「彰人には改めて会いにくると伝えて」と言って、今きたばかりの玄関から出ていいってしまった。  僕はそれを呆然と身送ることしかできなかった。  まだ残る甘い香り。 「え、え……ええっ」  突然のことに驚いて慌てて彰人のところに向かう。 「あ、彰人さんっ、さ、沢木さんが和人さんに……連れて行かれた」  子ども部屋のドアを開けると着替えた彰を抱っこした彰人が出てきた。リビングに続いてるから彰人はすぐに、「何の匂いだ?」と聞いた。 「だから、沢木さんが和人さんに連れて行かれた」  僕が言うと、「ああ、そう言うこと」と彰人は笑った。 『終わり』

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