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第39話
何度も何度も男の子種も受け入れている。
それは溢れかえる程で、彼の太腿を濡らしていた。
その香りは、何故か不思議と瑠璃の花の香りにも似ていた。
トールはもう喘ぎ疲れ、声も掠れて出ない程だった。
気持ちの良い場所を突かれ擦 られ、自分自身も何度か達していた。
最初は戸惑っていた肉体 も、快楽に溺れ、変化する。自分の内から去って行こうとするイオの昂りを、きゅっと締めつけ逃すまいとする。
その度にイオが「可愛い」と口づけを施す。
夜明けが近くなった頃。
これが最後だと。
今までになく奥を、内臓を突き破りそうな勢いで突かれた。
「あぁぁ…っ、ぃおぉぉ」
眼の前が瞬き、身体じゅうが戦慄 いた。
掠れた声を、それでもあげずにはいられなかった。
「トール」
愛おしげに名を呼ぶその顔は、汗と涙で霞んで見えた。
金色の髪。
青い両の瞳。
そんなふうに。
もう痺れて起き上がる気力もない筈なのに。
手を伸ばし、イオの首に手を回す。
掻き抱 く。
「ああ……愛しい方」
その声は自分の声だが、でも自分ではない。
ずっと愛される悦びを共にしていた、もうひとりの自分。
ああ。
最初で最後の愛を交わしたのは、やはりこの谷でした。
あの時は、哀しみのうちに貴方に愛され、心が契れそうなくらい辛かった。
でも、今は悦びだけに身を任せることができました。
愛しています、兄さん……。
彼の感情をも共にした。
──それを最後に意識が遠退いた。
★ ★
朝の光が目蓋を擽る。
トールはゆっくりと眼を開いた。
「…………」
そのことに、初めは気がつかなかった。
身体を瑠璃の花の上に横たえたまま、青い空を見上げる。
静かだった。
誰もいないように。
誰も…………。
身体を起こし、辺りを見回すと、そこには誰もいなかった。
「イオ……」
谷じゅうを探し回ることはしなかった。
不思議とここにイオがいないことが感じられたから。
「イオ……なんで。人間 に戻ったんじゃなかったのか。ボクと一緒にいる為に人間 に戻りたかったんじゃなかったのか」
つんと鼻の奥が痛くなる。
でも、涙は流さない。
見れば、衣服はきちんと整えられていた。
ところどころ、青く染まった上衣を彼は脱ぎ捨てた。
朝日に晒された肌には、たくさんの紅い花が散っている。
トールはその愛の証 を愛おしそうに撫でた。
「そうだね。ボクらはまた出逢う。大丈夫…………捜すよ、イオ」
数日が経ち、旅支度を整えたトールが、瑠璃の谷に別れを告げにきた。
昼なお暗い森を抜け、高い崖の上から見下ろす。
谷じゅうはまだ、瑠璃の花に覆われていた。
あの日と同じように。
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