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【出会い編】1.獣人の街
獣人。
姿形はヒトと似ていても、その生態は犬やオオカミに近い。
進化のどの過程でヒトと道を違えたのか…
そのほか未知の部分が多く、現代においても熱心な研究が続けられている…
その獣人が住む獣人保護区に、ある調査チームが派遣された。
その研究チームのひとり、ハル。
都内の大学院に通う、ごくふつうの男子学生だ。
幼い時から獣人に憧れており、大学院でも獣人を専攻するほどその存在に魅了されている。その熱意が教授に買われて、今回の調査隊に参加していた。
(獣人…実際に会うのは初めてだ!)
(知識としては知っているけど…実際はどんな種族なんだろう)
やっと会えるんだという希望を胸に、森を進んでいく。
案内人を先頭にして、ジャングルを進む一行。
交わす言葉も少なく、粛々と森を歩いている。
背負った荷物が重い。
(さすがにちょっと疲れてきたな…)
(カーラーの内側まで汗でびしょびしょだ…)
(あとどれくらいで着くんだろう?)
しばらくすると、茂った木々の向こうに立派な城が見えてきた。
このあと調査チームは、その城で獣人族の王に謁見する予定だった。
「教授は何度か王様にお会いしたことがあるんですよね?」
「そうだよ。友達みたいなもんさ」
「困ったな、おれ、王様に謁見できるような上等な服持ってきてませんよ」
「優しい種族だから大丈夫」
「手土産も持ってきてませんし…」
「手土産は僕も悩んだんだけどねえ、このまえ発表した僕の獣人論文と、お酒くらいしか思いつかなかったねえ」
わはは、と笑う教授はおおらかというかテキトーというか…王族の方々とそれくらい気安い仲なのだろう。
その時、子犬が数匹、じゃれ合うようにして小道に飛び出してきた。
「獣人族の子犬!?わあ、かわいい…!」
獣人族のこどもは、ある程度育つまではコロコロ・もふもふした愛らしい子犬の姿で過ごす。
個体差はあるがだいたい1歳〜2歳頃になるとふとした拍子にヒトの姿を取るようになり、それから練習を重ねてヒトの姿に慣れ、二足歩行するようになるのだ。
花咲く野で子犬たちがコロコロ・キャッキャと戯れている様子はとても微笑ましかった。
「きょ、教授!触ってもいいでしょうか…!?」
「いいと思うよ」
モフモフに目のないハルである。
教授から許可を得ると、すぐさまかがみ込んで子犬たちに手を伸ばす。
「わん!わん!」
「キャン!キャン!」
なんだなんだ!知らない人間だ!!とコロコロと駆け寄ってくる子犬たち。
ハルが差し出した人さし指を交互にクンクン嗅いで、千切れんばかりに尻尾を振る。
興奮でキャンキャン鳴きながら身体を擦り付けてきたり、膝に乗ろうとしてきたり、顔をべろべろ舐めようとしてきたり…
とにかく熱烈な歓迎っぷりである。
「かわいいなあ…!」
子犬たちを1匹ずつ抱き上げてモフモフしまくるハル。
その時、柔らかいテノールの声がした。
「見つけた、おれの花嫁…!」
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